抄録
鉄混合油で食品を揚げた場合の鉄の動向と揚油の変化をみた結果を要約すると次のようになる.
1) 豆腐や大鯨, 卵白ゲルを鉄混合油で揚げると, 多量の鉄がタンパク質との複合体を形成して, 揚製品に残り, 一部の鉄は有機物とともに沈殿するので, 揚油中の鉄は著しく減少する.
2) じゃがいもやデンプンゲルを鉄混合油で揚げた場合は, デンプン-鉄複合体を形成しにくいが一部の鉄がデンプンに吸着されて沈殿するので揚油中の鉄はある程度減少する.
3) 豆腐のように, すだちやすい食品は, 表面積も増大しており, かつ, 吸油量も大きいので, 多量の遊離型の鉄を吸着する.
4) 鉄混合油で食品を揚げると, 原料油より, 色, 酸価, TBA値ともに新油に近づく.
5) 鉄混合油で揚げた食品の色, 味, においについて官能検査を行った結果, 色以外には有意差は認められなかった.