抄録
森林斜面の降雨浸透過程を再現するために必要な体積含水率θと土壌水分吸引水頭φの関係である土壌水分特性を, 不攪乱供試体の室内試験に頼ることなく, 原位置での土壌水分計測データのみを用いて同定する方法を確立するため, 広島市佐伯区の荒谷地区の試験斜面の計測データを用いた土壌水分特性 (バンゲヌヒテン式) の同定をいくつかの方法で試みた。
体積含水率のみの計測より逆解析により土壌水分特性を同定する繰り返し探査法と, 同深度の体積含水率と土壌水分吸引水頭の計測値より直接土壌水分特性曲線を求める原位置θ-φ法により求めた土壌水分特性パラメーターを用いて, ある降雨イベントの体積含水率の経時変化の再現計算を比較すると, 前者は後者と同程度の再現精度を有することとなった。また原位置θ-φ法に深さ方向の土壌水分特性の変化を反映させようとすると, バンゲヌヒテン式のα, nのみならず飽和体積含水率に相当するθsも深さ方向に変化させることで, 特に土壌水分吸引水頭の低い領域での再現性が高くなることがわかった。