抄録
醗酵パンの生地冷蔵の製造にさいし, 容積を低下させる原因について検討し, つぎの結果を得た.
1) 酵母量が9%と多くなると生地の膨化や酵母活性は冷蔵2日目から低下を示し, 酵母が多いほど, 醗酵耐性は低下することがみられた.これは各種栄養源の量的変化や醗酵代謝産物の蓄積などが, 短い時間に一度におこるためでないかと考える.
2) 糖量が11%と多い場合は, 急激な膨化低下はみられず, 冷蔵7日でも糖3%の1日より若干低い値を示すにとどまり, 生地の最適状態の持続は長い.
3) 冷蔵生地にエチルアルコールを1~5%添加すると日数の経過とともに生地の膨化作用が低下し, 10%添加では冷蔵4日までは生地膨化はほんのわずかしかみられずエチルアルコールは生地醗酵に対して負に作用した.
4) 生地の混捏比較では, 第2段階の混捏不足の場合は, 最適状態の持続は冷蔵1日と短く, 生地の膨化には負に働くことがみられた.一方第4段階の完全混捏の場合は, 最適状態の持続は冷蔵3日とやや長く, 冷蔵生地においても標準製法同様の混捏状態にした方がよい結果が得られた.