家政学雑誌
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瀬戸内海島しょ部の生活環境に関する基礎調査 (第4報)
生活環境評価
田中 幸恵佐々木 ひろみ大原 早苗宮内 貞子冨士田 亮子
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1978 年 29 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

以上を要約すると
1) +評価は, 保健性に関するもの, -評価は便益性, 快適性・文化性に関するものが多い.
2) 最近5年間で良くなったものは, 離島振興法によって施設の充実したものがほとんどである.
3) 最近5年間で悪くなったものは, モータリゼーションの進行によってもたらされたものがほとんどである.
4) 狭域的な施設は各地域に配置され住民の評価も良い.広域的な施設になるほど地域差がみられ, 施設のない地域では評価も悪い.
5) 生活環境評価と勢力指数との間に正の根関関係がみられ, 施設の有無やその数が問題になるといえる.
6) 医療施設の現況と評価や, 盲腸の場合の島外依存率と評価の間には, 相関関係がみられ, この例から, 施設の内容や, 施設への距離と交通事情が問題になるといえる.
7) 現在の全体としての住み心地は, 「ふつう」あるいは「良い」が過半数を占め, 自然をそこなうことなく, 便利な生活をしたいという住民の気持を表わしている。
本報での問題点は次のとおりである.
1) 施設配置に際しては, その量と質と設置場所が大きな問題となるので, その地域に即し, かつ住民の要求に応じた配慮がなされなければならない.その場合の基準となるべきものについては, 今後の課題としたい.
2) 小学校区内の施設は多目的に使う複合施設として, 住民の要求に対応している.今後は, さらにこれらの施設内容が充実されることが望ましい.
3) その他の施設については, i) 現在ある施設の充実.ii) いくつかの町が集まって必要な施設を建設する (たとえば, 医療施設, 供給施設など).iii) 近くの都市に依存する (交通網の充実が前提となる).の三段階的な施設利用を行うことである.特に不満のみられた学校施設の統廃合には考慮が欲しい.また, 弱い立場の病人, 子供, 老人に対する配慮が必要であろう.そして, いくつかの町が共同で必要な施設を作る際, 各島の持味を充分生かせるような工夫が欲しい.
4) 施設は, 他の環境系と違い, 人為的・技術的なものなので, 利用の仕方が問題となる.たとえば, スポーツ・娯楽施設として開放されている校庭などの活用, 図書室の活用, 老人用施設の活用などが問題となろう.

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