家政学雑誌
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瀬戸内海島しょ部の生活環境に関する基礎調査 (第5報)
住民意識と総括
佐々木 ひろみ大原 早苗宮内 貞子冨士田 亮子田中 幸恵
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1978 年 29 巻 1 号 p. 40-46

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抄録

本四架橋建設のルート下にある6島において, 居住地の形成に関連する住民意識を把握するため, アンケート調査を行った.現住地に対する「愛着意識」と「地域の瀬戸内海島しょ部の生活環境に関する基礎調査 (第5報) 将来像」についての住民の意識を要約すると次のようになる.
1) 瀬戸内海島しょ部島民の愛着意識はきわめて強い.性別では女性よりも男性の方が愛着意識が強い.年齢別では若年齢層よりも高年齢層の方が愛着意識が強い.2) 居住年数は愛着意識の醸成にかかわる重要な要因となっている.
3) 住居所有形態別では, 借家居住者より持家居住者の方が愛着意識は強いが, 直接的には, 持家居住者と借家居住者の居住年数の差が影響していると思われる.
4) 職業のちがいによっても愛着意識は影響を受ける.農林業従事者は愛着を感じているものの比率がいちばん高い.学生・家庭婦人はいちばん低い.
5) 自然環境条件や生活環境施設の整備状況等, 居住地の環境水準が愛着意識に影響している.
6) 現住地が自分の「生れ故郷・ふるさと」である場合は, 愛着意識の醸成がより確かになると思われる.また「家」意識, ないしは「土着意識」に支えられている場合も多いようである.
7) 「地域の将来像」に関する住民の意識としては, 「現状を保全する」ことを望んでいるものが多い.6島中5島では「現状保全」が具体像の第1位を占めている.
8) 広島県ゾーン3島では「地域の将来像」に対する無関心層が少ないのに対し, 愛媛県ゾーンでは無関心層が非常に多い.また, 広島県ゾーンは関発指向が過半数以上を占めるのに対し, 愛媛県ゾーンは過半数に満たない.
9) 島内に主たる産業基盤を持たない島では, 本四架橋に「観光開発」への期待を強くかけている.
10) 近接する地方中小都市の有利な通勤圏内に位置する島は, 住宅地ないしはベッドタウン的役割を持つ島としての発展を望んでいる.

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