家政学雑誌
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寝具材料の保温性に関する研究
松尾 みどり中嶋 朝子花田 嘉代子
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1978 年 29 巻 3 号 p. 152-156

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抄録
ASTM保温性試験機を用いて測定し, 熱伝達率を求め, 試験機の精度を検討した結果, ほぼ妥当な値が得られることがわかった.そこで, 繊維集合体およびウレタンフォームについて保温率, 熱伝達率を求め, 保温性を検討した.その結果は次のようである.
1) コットン, シルクは密度0.04g/cm3前後において, ウレタンフォームは密度0.03~0.2g/cm3において, 保温率が大きく, 熱伝達率が小さく, すなわち保温性が高くなった.また, ウレタンフォームは上下両表面に布地を置くことにより, 0.017g/cm3のように小さな密度において保温性が高められた.つまり, このような小さな密度においては, 含気量が多く, 熱気流による伝熱が大きいため保温が小さくなり, 布地は熱気流を妨げたものと思われる.寝具材料は布地で包んで用いるので, 布地の通気性の大小は, 寝具の保温性の大小に影響すると考えられる.
2) 密度が一定の場合, 厚さが増大すると保温率は増大するが, 密度0.005~0.49/cm3においては7~10cm前後の厚さになると, 厚さによる違いは小さくなる.また, ウレタンフォームの厚さ5~6cm以下においては, 上下両表面に布地を置くことにより保温率は高められた.すなおち, 厚さ5~6cm以下では適当な布地で材料を包むことにより保温効果が高められると思われる.
3) 6種の繊維集合体およびウレタンフォームの保温性の大小は, 同じ密度において, シルク, ウレタンフォームが大きく, ラミーが小さく, 青苧はさらに小さい.ウール・ポリエステル混, ポリエステル, コットンはその中間であった.試料によってこのように保温性の大小が生ずるのは, 試料の吸湿性, 繊維の太さ, 含気量, 含気の状態などの違いによるものと考えられる.寝具材料として考える場合, 高温高湿の日本において, ラミーなど麻わたが夏用寝具材料として見直されてもよいのではないかと思われる.
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