家政学雑誌
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界面活性剤による卵アルブミンの可溶化
杉原 利治
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1979 年 30 巻 5 号 p. 423-428

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抄録
界面活性剤存在下において, 卵アルブミンの溶解度を水中, pH7.4リン酸緩衝液中で測定し, 界面活性剤の種類, 界面活性剤量, 卵アルブミンの空間構造の変化等の面から蛋白質の可溶化に対し検討を加え, 以下の結論が得られた.使用した界面活性剤は, ドデシル硫酸ナトリウム (SDS), ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (LAS), ラウリン酸ナトリウム (SL), ヘキサデシルトリメチルアンモニウムプロミド (CTAB), ポリオキシエチレングリコールノニルフェニルエーテル (PNE) である.
1) いずれの界面活性剤も, 水中, リン酸緩衝液中で卵アルブミンの溶解度を増加させた.界面活性剤の蛋白質可溶化力は, 水中でPNE>LAS>SDS>CTAB, リン酸緩衝液中でPNE>SL, LAS>CTAB, SDSの順であった.両液中の溶解挙動は大筋で類似していたが, 可溶化量は全般にリン酸緩衝液中の方が大きかった.
2) 卵アルブミンの可溶化では, 油脂類の可溶化にみられるような可溶化量のcmc依存性を示さず, 蛋白質の可溶化機構が油脂類とは異なっていることが示唆された。そして, 従来提出されてきたミセル状界面活性剤による可溶化の可能性はきわめて小さいことが示された.
3) 界面活性剤は卵アルブミンの空間構造を変化させうるが, その構造変化と可溶化量との問には相関関係がなかった.構造変化をほとんどもたらさない温和なPNE, SLが大きな可溶化能力を示した.
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