家政学雑誌
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加熱フライ油の評価に関する測定項目の検討
浦上 智子和辻 敏子富安 郁子
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1979 年 30 巻 9 号 p. 762-769

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抄録

加熱油の変質程度を知るのに一般に用いられている生油の評価方法が適当かどうかをリパーゼ活性と合わせて検討した.試料油は家庭での使用条件にあわせて, A : 断続加熱した油 (大豆油と大豆油にFe3+, BHA, BHA +Fe3+を添加した油を脱脂綿を用いて水添加しながら180℃で30時間まで断続的に加熱した), B : 加熱後一定温度で貯蔵した油 (一定の水分量のドウを180℃で1, 2, 3時間加熱して後, 5℃, 25℃で貯蔵した大豆油) を用いた.測定項目および結果は以下のとおりである.
Aの油 : POV, AV, TBA値, COV, 233nm における吸収, 屈折率, リパーゼ活性について検討したところ, 233nmにおける紫外吸収と屈折率は加熱時間とともに増加の傾向を示した.両者の相関係数をもとめたところR=0.62が得られた.リパーゼ活性は加熱時間が増加するにつれて減少の傾向を示したが, 試料の乳化状態についてはさらに検討を要する.その他の測定項目については今回の条件下では評価方法として適切でないことがわかった.またFe3+を添加した系ではBHAを添加してもその酸化促進を阻害できなかった.
クルトンを用いた官能検査では, 25時間加熱油で「 油くさい」, 「揚がり方」で1%, 味で01% 危険率で有意差がみられた.このときの他の測定値はAV 1.35, COV 320meq/kg, 233nm 吸光値E1%1cm28.0, nD 1.478, 酵素活性減少率80%であった.
Bの油 : AV, TBA値, 233nmにおける紫外吸収について検討した.TBA値, 233nmの吸収はいずれの加熱時間, 貯蔵温度でも増減を示し, 揚げ油の貯蔵中の変敗測定に不適当であった.AVは低温貯蔵の場合のほうが値が大きくなり, フライ条件, 貯蔵条件により影響をうけるようである.

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