抄録
そば粉の調理加工特性を知るために, 加水混捏中の粘弾性挙動について, そば粉の製粉法および節別の影響の有無について実験を行ったところ, 次のようなことが明らかとなった.
1) そば粉は製粉法すなわち碾き方が加水混捏中の粘弾性に影響を与え, とくに初期混捏時に著しい差が現れる. 同一加水量では, [キ] より [石] のほうが硬粘度は低く, 混捏後のテクスチュアは硬さでは [キ] が高いが, 凝集性, 弾力性, 付着性のいずれも逆に [石] が高く, 弾工力性は両者に著しい差が見られ [石] が高い値を示した.
2) 10%濃度で求めたアミログラムにおいても製粉の影響が見られ, 糊化開始温度は [石] が低く, 冷却時粘性は [キ] より [石] が高い値となった. 製粉の影響は澱粉にも及び, アミログラム特性値によれば, [石] 澱粉は加熱時最高粘度と92.5℃における粘度を高め, また冷却時1,000BUに到達する時間が [キ] 澱粉より早い.
3) 製粉法は粒度分布に差を生じ, [石] は170~200メッシュにピークを有し, 大粒子, 小粒子にわたって均一に減少する正規分布型の粒度分布が見られたが, [キ] の分布は60~115と200~250メッシュに二つのピークが見られた.
4) 節別による粒度分布では1番粉は細粉が多く, 115~170メッシュが63%を占め, 2番粉は100~170メッシュと分布幅が広く81.5%であり, 3番粉はそれよりやや粒度が粗く100~150メッシュの占める比が81%であり, 4番粉は1~3番粉にくらべて大粒子の占める割合が最も高く, 80~115メッシュで93%を占めた. 各番手粉でそれぞれ特徴ある分布をもつことが明らかとなった.