家政学雑誌
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魚肉の調理・加工におけるタンパク質の変化 (第1報)
カマスサワラ肉の粕漬におけるタンパク質の変化
下村 道子松本 重一郎
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1984 年 35 巻 10 号 p. 687-694

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抄録

カマスサワラ肉を粕漬にし, 28日間保存して加熱後にテクスチャーを測定し, 生肉におけるタンパク質の変化を調べた.また, 無処理肉および食塩添加肉も同様に保存・実験をし, 次の結果を得た.
1) 粕漬肉, 無処理肉および食塩添加肉の硬さをテクスチュロメーターで測定したところ, 粕漬肉では1日後に最も高く, 以後徐々に低下し, 14日以後一定となった。無処理肉では14日以後に低下し, 食塩添加肉では14日以後28日まで徐々に上昇した.
2) 粕漬肉の重量は1日後に減少し, 以後28日まで漸増した。水分は生肉で75.3%で, 粕漬1日後に約67%になり, 以後28日まで変化がなかった.
3) 粕漬肉, 無処理肉および食塩添加肉からSSP, AMおよびSPを抽出したところ, それらの抽出率は魚肉の個体差が大きく, 一定の傾向はみられなかった.
4) 各処理魚肉から抽出したAMの還元粘度は, 粕漬肉では徐々に低下し, 食塩添加肉では初期から低下した。無処理肉では14日以後低下した.
5) SDS-PAGE分析によって, 粕漬肉より抽出したAMおよび酒粕抽出液を加えて保存したAMにおいて, アクチン, ミオシンがより低分子量の物質(分子量12万~1.3万)に分解されていることが示された.これは, 酒粕中の酵素の作用であると推定された.

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