抄録
レクチンが有する多彩な生物活性のなかでとくに毒性に着目し, 赤血球凝集活性と致死活性の相関に留意しながら, とら豆レクチンを精製したところ, 最終的に両活性をともに有する均一なタンパク質として単離することができた.とら豆100gより精製レクチン14mgが得られ, 最終活性としては, 2.4μgで1%マウス赤血球浮遊液1mlを完全凝集し, 240μg/g体重の腹腔内投与で100%のマウスを死亡させた.また, 試験管内の消化実験でとら豆レクチンは, ペプシン, トリプシン, α-キモトリプシンに耐性を示し, 経口摂取された場合でも消化管内で容易には失活しないと推定された.腹腔内投与後の組織変化を肉眼と顕微鏡で観察したところ, 肝, 腎, 脾等の臓器にうっ血が認められた.これらの結果より, 赤血球凝集活性をもつとら豆レクチンが致死活性発現の本体であることを確認した.