1986 年 37 巻 10 号 p. 855-863
糊化小麦でんぷんを種々の含水率に調製し, 加熱条件と結合水量との関係を調べた.
1) 試料をフィルムに包み湿熱的に加熱すると, 結合水量が多く加熱後の変動量が大きいが, 開放状態で長く加熱すると結合水量が減少し, 変動量がしだいに小さくなった.
2) マイクロ波加熱と伝熱加熱との結合水量を比較すると, 元来含水率の低い場合, あるいは加熱によって含水率の低下した場合に加熱法の差が認められ, マイクロ波加熱のほうがほぼ例外なく結合水量の変化が大きい特色がみられた.
含水量によって結合水量が変化する水和特性があること, 加熱によって水和量が変化すること, マイクロ波加熱と伝熱加熱では水の移動速度や加熱後の水分布に大きな違いがあり, マイクロ波加熱では結合水量の多い領域で加熱速度が速くなる誘電加熱特性があることなどが, 水和量を変化させる要因と考えられる.
なお以上の知見をもとに, 加熱法を特徴づける水和モデルを想定した.