家政学雑誌
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炊飯条件としての沸騰継続時間
米の調理に関する研究 (第4報)
関 千恵子貝沼 やす子
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1986 年 37 巻 2 号 p. 93-99

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抄録

1) 蒸らし直後の飯の糊化度は, 沸騰継続時間5分の飯ではかなり低く, 86.3%であった.沸騰継続時間15分以上の飯は糊化度にほとんど差がなく, 94.5~94.7%であった.24時間経過するといずれの飯も糊化度は低くなり, とくに沸騰継続時間5分の飯はいちだんと低く, 78.4%であった.沸騰継続時間がもっとも長い25分の飯は87.1%と高い糊化度となり, 老化がいくぶん抑えられていることを示した.
2) 80%エタノール可溶性の還元糖量はほとんど差がなかった.
3) 赤外線水分計による脱水速度は沸騰継続5, 10分の飯にくらべ, 15, 20, 25分の飯はやや遅い.この3種の飯の脱水速度の差は小さく, 水分の在り方が似ていると思われる.
4) 沸騰継続時間が長くなるほどやわらかい飯となり, 糊化が十分に進んだ状態となる.沸騰継続15分以上の飯にはすべて付着性がみられ, 飯粒表面の粘りが平均してあらわれてくる.
5) テクスチュロメーターによる結果から, 沸騰継続15, 20分の飯が他の飯より好ましいテクスチャーであることがわかった.
6) 官能テストにおいて, 沸騰継続時間が15分以上の飯が有意に好まれ, 全体が均一にむらなく炊けていると評価された.
7) 検鏡結果においても, 沸騰継続時間が15分以上になると組織の膨潤崩壊が顕著で, 10分以下の飯に比較して中心部までよく炊けているようすを認めた.
以上より, 沸騰継続15分以上の飯はほぼ一定の性状に炊き上がり, 飯として好ましい状態であると判断される.98℃以上におかれる時間は, この沸騰継続時間に加え, 蒸らし操作の初期の段階にまで及ぶので, 沸騰継続15分の場合は98℃以上の温度に19.5分であった.すなわち, 好ましい状態の飯に炊き上げるには, 直接の加熱操作を含むか含まないかは別として, 98℃以上の温度に少なくとも約20分はおく必要があることがあきらかになった.

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