家政学雑誌
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37 巻, 2 号
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  • 熱伝達法の異なるオーブンの加熱能について (第4報)
    渋川 祥子
    1986 年 37 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    各種オーブソの加熱能に対し, 天板を使用することの影響や天板の種類による影響の違いを検討するために6機種のオーブンと5種類の天板を使用して, 天板温度の測定やクッキー焙焼時の焼き時間や焼き色の測定を行った.その結果, 次のことが明らかとなった.
    1) 電気オーブンでは, 庫内温度よりも天板温度が高くなるものがあり, とくに黒ホーローでその差が大きかった.他のオーブンでは, このような現象はみられなかった.
    2) クッキーの焼き時間は, 黒ホーロー以外では, 天板を使用しても見かけの熱伝達率 (「h」) との間に有意の負の相関がみられた.使用する天板により焼き時間は異なり, とくに「h」の低いオーブンで, その影響が大であった.熱伝導率のよい天板を使用すると, オーブン間の焼き時間の差は小さくなった.
    3) クッキーの上面の焼き色については, どの天板を使用しても同程度の色がつき, 色の濃さは, オーブンの「h」と放射による伝熱量の割合 (「δ」) とで決まるが, 下面の焼き色は天板によって異なった.パイレックスを使用すると, 上面と下面の焼き色の差が小さくなった.天板の上にアルミはくを敷くと電気オーブンでのみ上下差を縮める効果があった.
  • 米の調理に関する研究 (第4報)
    関 千恵子, 貝沼 やす子
    1986 年 37 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 蒸らし直後の飯の糊化度は, 沸騰継続時間5分の飯ではかなり低く, 86.3%であった.沸騰継続時間15分以上の飯は糊化度にほとんど差がなく, 94.5~94.7%であった.24時間経過するといずれの飯も糊化度は低くなり, とくに沸騰継続時間5分の飯はいちだんと低く, 78.4%であった.沸騰継続時間がもっとも長い25分の飯は87.1%と高い糊化度となり, 老化がいくぶん抑えられていることを示した.
    2) 80%エタノール可溶性の還元糖量はほとんど差がなかった.
    3) 赤外線水分計による脱水速度は沸騰継続5, 10分の飯にくらべ, 15, 20, 25分の飯はやや遅い.この3種の飯の脱水速度の差は小さく, 水分の在り方が似ていると思われる.
    4) 沸騰継続時間が長くなるほどやわらかい飯となり, 糊化が十分に進んだ状態となる.沸騰継続15分以上の飯にはすべて付着性がみられ, 飯粒表面の粘りが平均してあらわれてくる.
    5) テクスチュロメーターによる結果から, 沸騰継続15, 20分の飯が他の飯より好ましいテクスチャーであることがわかった.
    6) 官能テストにおいて, 沸騰継続時間が15分以上の飯が有意に好まれ, 全体が均一にむらなく炊けていると評価された.
    7) 検鏡結果においても, 沸騰継続時間が15分以上になると組織の膨潤崩壊が顕著で, 10分以下の飯に比較して中心部までよく炊けているようすを認めた.
    以上より, 沸騰継続15分以上の飯はほぼ一定の性状に炊き上がり, 飯として好ましい状態であると判断される.98℃以上におかれる時間は, この沸騰継続時間に加え, 蒸らし操作の初期の段階にまで及ぶので, 沸騰継続15分の場合は98℃以上の温度に19.5分であった.すなわち, 好ましい状態の飯に炊き上げるには, 直接の加熱操作を含むか含まないかは別として, 98℃以上の温度に少なくとも約20分はおく必要があることがあきらかになった.
  • 渡辺 祐子, 柳沢 幸江, 寺元 芳子
    1986 年 37 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    バター添加量の異なるケーキを調製し, 経時的物性の変化, でんぷんの老化, 水分の挙動を測定し, あわせて官能検査を実施し, バターケーキの保存性について検討した.
    1) テクスチュロメーターによる物性の測定では, かたさ, 凝集性とも保存初期の変化が大きく, 3日以後はあまり変わらなかった.
    2) ノミター添加量の多いケーキはどの保存期間においても, バター添加量の少ないケーキよりもやわらくてもろい傾向を示し, 保存による変化が比較的少なかった.
    3) でんぷんの老化については, バター添加量による差はみられなかった.各ケーキとも, 保存3日目まで急激に老化が進行し, 以後はほぼ平衡状態であった.
    4) 水分に関しては, その減少および結合水の割合ともバター添加量による著しい差はみられなかった.
    5) 官能検査においても物性の変化と同様, バター添加量の多いケーキのほうがやわらかく, しっとりしており, かつ保存しても, 比較的その食味を保持する傾向がみられた.
    6) 小麦粉に対するバターの量は, 100, 75%では保存3日までは食味のうえで有意差がみられなかったが, 50%以下は保存初期から有意差がみられ, 日もちがよくないことがわかった.
  • ボディスーツの衣服圧と動作抵抗性について
    吉村 博子, 石川 欣造
    1986 年 37 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    ボディスーツを例に, 衣服の拘束性を圧迫性と動作抵抗性の面から検討した.立位正常姿勢位としゃがみ込み姿勢位の圧迫度合を衣服圧で表す一方, 二動作間におよぶ衣服の動作抵抗性を仕事量で算出した.
    1) ボディスーツ着用時の布の二軸伸長荷重特性と身体の曲率半径から間接的に衣服圧を算出したところ, 背面上部, 轡部, 腹部で約15gf/cm2と高い傾向がみられたが, その他の部位は数gf/cm2の値であった.また, しゃがみ込み姿勢位において衣服圧は若干増加した.しかし, 圧力センサを用いた直接計測によると, ゴム紐や縫目直下の圧迫が高く, 最高115gf/cm2もの値がみられた.
    2) 衣服の運動機能性を評価するため, 動作間に働く衣服の動作抵抗量を仕事量で表す検討を試みた。仕事量は, 布の伸長変形によるWtと, 摩擦を伴い皮膚上を滑るWfの二過程に分けて算出した.その結果, 身体変形に対し布の伸長変形で対処する背面下部でWtの値は高く, 滑り量と圧迫力の大きい背面上部においてはWfが高い傾向を示した.
    3) 発汗などによって衣服が湿潤すると皮膚一布間の摩擦作用によりとくにWfの値は増大し, 総仕事量は乾燥時の約3倍に増加した.布の伸長特性と摩擦の影響が衣服の運動機能性にかかわる重要な因子と考えられる.
  • 北村 トモエ, 中村 玲子
    1986 年 37 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    近年めざましい科学, 技術の進歩にともない, われわれの衣生活にも大きな変化がもたらされた.これらが, 明治, 大正, 昭和にわたり長い衣生活体験を経てきた現在の高齢婦人たちの服装色嗜好にどのような影響を与えたかを知るために, 先に筆者らは近畿地域における調査研究を行ったところ, 橘の報告に比し, 時代推移にともない高齢婦人の服装色嗜好もまた変化をみるという結果を得た。本報ではさらに, 地理的に異なる3地域を選び, 環境の変化により地域差がみられるかを知るために, 夏のワンピースをテーマとし, 8色の嗜好順位とその要因について, 20歳代と50, 60, 70歳代との比較を行ったところ, 次のように高齢者の服装色嗜好の一端を明らかにすることができた.
    1) 今回の調査の8色について高齢群の好む色は, 橘の報告による寒色系の青色から暖色系のベージュに移行したことは, 筆者らの研究ですでに報告しているが, 今回の調査でも同様であった.またオレンジ色が好まれなかったことについても同様であった.これらの2色は, 高齢群内では顕著な地域差はみられなかった.また順位値についても高若両群共に接近した値であった.
    2) 年齢別に嗜好順位をみると, 高齢群, 若齢群間の相関は少なく (γ=0.333), 高い一致はみられなかった.嗜好順位と年齢の関係は, 50歳代と60歳代, 60歳代と70歳代などの年齢が接近するものについては, 順位の相関はやや高く, 20歳代と各年代の順位相関については年代問の距離が大きくなるにしたがって相関は低くなっている.このことからも服装色の嗜好は加齢にしたがって, 変化することが明らかになった.
    3) 地域別に嗜好順位をみると, 3地域間の相関は, γ=0.929~0.976であり地域による差は顕著ではなかったが, そのうちブルー, 茶色に限りKA地域がやや異なった.
    4) 色の選択理由については, 三つのタイプがみられ, それらは順位値とも関係があった.
    高齢若齢群ともによく似た理由をあげ選択している色にベージュ, オレンジがあり, これら2色は順位値も接近していた.
    次に高齢, 若齢群ともに同様な理由をあげて嗜好順位が極端に異なるものに, 茶色, ピンクがあげられる.
    選択理由が地域により異なるものにブルー (KA), ピンク (Os) があげられるが, これらは嗜好順位が年齢により異なった.
    5) 図4を通して嗜好度の高い色は “似合う” の値が高く, それは年齢によって変化している.好まない理由 (嗜好度が低い) として“似合う” の値が低いことがみられる.
    6) 高齢婦人の服装色嗜好は, 年齢を主たる要因として加齢にともない変化している.地域差による要因は僅少であった.
  • 人文・社会科学的家事労働研究の諸前提について
    長嶋 俊介
    1986 年 37 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    In Japan, household work are studied mainly in the field of human-engineering, physiology, standardization of each working systems, etc. But, contemporary situations around them have completely changed. The market and public-sector economies have expanded to the area of household work. We need to take them into our analysis from cultural and social scientific aspect. Even then we should not be involved in the logic of capital or market exchange “economies.” The first reason is that “home” contains many factors of non-market economies. The second. reason is that “Shadow Work” tendencies (I. Illich) have dominated in the market-exchange-economies. Now we should re-consider the starting point of “Home-Economics” originated in U.S.A., and introduce new paradigm of anthropological economics “Substantive Economy (K. Polanyi)” into our home economics.
  • 米ならびに米デンプンの調理科学的研究 (第9報)
    庄司 一郎, 倉沢 文夫
    1986 年 37 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    もち, うるち精白米から米粉と米デンプンを調製し, それぞれを脱脂したものにつき, 加熱したさいの粘度変化をアミログラフにより測定し, それぞれを比較検討することにより脂質が粘度にどのように関係しているかを考察した.
    1) 米粉のアミログラムでは, 脱脂に伴いもち, うるち米ともに最高粘度が大となり, とくに, もち米では結合脂質除去により未脱脂米の6倍と著しく大となった.
    2) 米デンプンのアミ糧グラムでは, 結合脂質を除いた場合, 最高粘度は, もち米デンプンではさらに大となり, 少量の脂質がデンプンの膨潤抑制に関係していた.一方, うるち米デンプンでは結合脂質を除去することにより, 未脱脂デンプンよりも逆に粘度は減少し, もち米デンプンとうるち米デンプンでは結合脂質除去による影響は異なっていた.
    3) 米デンプンのヨウ素呈色度では, もち米デンプンの場合は, 結合脂質除去によりヨウ素呈色度が未脱脂デンプンより増加した.他方, うるち米デンプンでは, 結合脂質を除去しても, もち米デンプンでみられたような顕著な差はみられなかった.
  • 岩井 道夫, 山本 義彦, 大鹿 淳子
    1986 年 37 巻 2 号 p. 131-133
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    市販の生鮮中国野菜11種類について, その可食部の総ビタミンCおよび酸化型ビタミンCをヒドラジン法で, また鉄についてはo-フェナントロリン比色法と原子吸光法の2法により定量し, 次の結果を得た.
    1) ビタミンCについては全般的に含有量は多く, とくに落葵, 豆苗は90~125mg/100gと高い値を示し, 場菜もホウレン草と同程度の含有量であった.
    2) 鉄については上記2法の値はよく一致したが, ホウレン草よりも高い値を示したものは見あたらなかった.
  • 利尻島および札幌市調査
    飯村 しのぶ
    1986 年 37 巻 2 号 p. 135-145
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    以上の調査結果について要約する.
    1) 両地域とも, 出産見舞, 香典, 結婚祝, 病気見舞.入学祝 (小学校), 歳暮の6種が共通してもっとも基礎的な交際費と考えられていた.同時に, これら6種が「やめられない交際費」として意識されている.
    2) 利尻島では, 「交際費にお金がかかりすぎて困る」と回答した世帯が調査菊象の7割以上を占め, また札幌市にくらべても交際費に対する負担感が非常に強い.一方, 札幌市では, 交際費の負担感はむしろ弱く, 教育費や食費に対する重圧感のほうが強い.
    3) 利尻島の場合, 「やめたい交際費」としてお返しや進学祝があげられたが, 現実にはこれまでの慣行上, 簡単にやめるわけにもいかず, それがかえって負担感を強くさせていた.
    4) 意識調査上, 月別交際費の負担感は利尻島では3月がもっとも強く, 支出の実態では12月が最大となって, 意識と実態のずれがみられた.これに対し札幌市では, 意識・実態ともに12月が最大であった.
    5) 交際費支出の件数・金額は, 利尻島では年間1世帯あたり119.9件, 622,865円, 札幌市では47.7 件, 176,992円で, 両地域に共通する項目についてみても利尻島のほうが件数で約2倍, 金額では約3倍上まわっている.
    6) 支出相手は, 利尻島では半数以上が “夫” を中心とした親せき, 仕事上, および友人・知人で占められており, “イエ” を軸とした親せき関係や漁家同志の相互協力関係が交際の中心となっている.この点札幌市では, “妻” を中心とした親せき, 友人・知人のほうが “夫” の親せき, 友人・知人関係よりも多くなった.しかし今回の調査では, 夫の仕事関係が職業費として分類されている場合が多く, 他調査による検討が必要である.
    今回の調査結果をもとに, 今後とくに社会の発展と交際費の内部構造の変化について考察するにあたっては, さらに以下のようないくつかの仮説の枠組みが必要であろう.
    第一に, 贈答研究における互酬性の問題と同様, 交際費に関しても家計から支出した分と同様, 受けとった分の評価をすること.また受けとったさいの負担感や返礼のしかたについても明らかにすること.
    第二には, 社会的地位の上下関係と交際費支出額について.とくに人間関係の深さと経済的評価の軽重とは必ずしも一致しないと考えられ, この点に関して支出金額と交際関係の親密さを相互評価することも必要である.
    第三には, 現金と物との比重について.今回の調査では現物を市価相当額に換算して記録する方法をとったが, 一般に都市型になるほど贈答における貨幣への信頼度は高くなり, 現金そのものを使用する傾向が強まるとされる.この点についての郡部と都市での比較も興味深い.最後に, 贈答を中心とした形式的な交際費だけではなく, たとえば手伝い, 留守番などに対するだ賃だとかおすそわけなどを含め, 広い意味でのもののやりとり関係に発展させて考えていくことも必要であろう.
  • 五十嵐 脩
    1986 年 37 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 1986/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 37 巻 2 号 p. 156
    発行日: 1986年
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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