抄録
高齢者の被服開発に向けての基礎資料を得ることを目的に, 高齢者の被服購入の現状を調査した.その結果を次のように要約することができる.
1) 衣生活に対する関心は全体に低く, 高年齢になるほどその傾向は顕著であった.また, 購入, 着装, 管理のうち, 着装への関心が最も高かった.
2) この1年間, 被服を新調していない者は高齢者になるほど高率であった, 新調する場合は, 男女ともに「気に入ったものがあるとき」が最も高率で, ついで男子は「季節の変わり目」, 女子は「旅行」であった.一方, 新調していない者は90%が「今ある竜ので問にあっている」と回答していた.
3) 被服を購入する者は, 男子は「本人」が50%, ついで「妻」であるが, 女子は90%が「本人」であった.また, 男女ともに高年齢になるほど子ども, 孫, 他人による購入の割合が増加する傾向にあった.
購入場所は, 下着類, 上着類ともにデパートが最も高率で, 名古屋市という地域性がみられた.
購入時に配慮する項目としては, 下着類では「品質のよさ」, 「サイズ」, 「着やすさ」の用的項目が, 上着類では「サイズ」, 「着やすさ」の用的項目に加え, 「色・柄」, 「デザイン」の美的項目が高率であった.
4) 既製服の利用状況は女子より男子のほうが高率であった.既製服に不満をもっている者は全体に少なく, 不満の最も多い項目「サイズ」でも15%であった.
既製衣料サイズを認知している者は, 高年齢層ほど, 女子より男子に少なかった.繊維製品品質表示および取扱い絵表示に対する認知もこれと同様の傾向にあった.