日本家政学会誌
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油こしに関する検討
市川 朝子都丸 浩美佐々木 市枝軍司 敏博
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1987 年 38 巻 8 号 p. 725-731

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抄録
揚げものに用いた油を各種のフィルターでろ過してから保存する方法は, 油の性状に以下のような影響をおよぼすことが認められた.
油の色については, 透過測色パラメータのL値は, 揚げ操作でいったん下がるが, 放置日数の増加につれて再び上昇する傾向を示した.a値の測定結果は, 揚げ操作によって緑色を帯びたものから赤味を帯びたものに変わるが, 経時的には赤味が減少し, 赤味の程度は弱まる傾向を示した.b値は揚げることで黄色味を帯び, 経時的に黄色味がさらに強まる傾向を示した.a値において, ややかす入り油の値が他にくらべ経時的に高い値を示したほかは, ろ過の有無, フィルターの種類差による顕著な差はみられなかった.
酸価, ヨウ素価および粘度の変化に関しても, ろ過の有無, フィルターの種類差との相関性は明らかでなかった.
透過率や濁度の変化に関しては, ろ過効果が認められ.今回の素材のなかでは質量の大きな綿のフィルターでろ過した場合に, 保存初期段階での効果が高く, 透明度が高い。この点については油の中に残存するかすの成分である微粒子の量が関与すると考えられたため, 濁度と微粒子量の関係を検討した結果, 質量の大きなフィルターでろ過した油の中には残存する粒子量が少ないという傾向が認められた.
官能検査による揚げ油のにおいの経時的変化の結果から, ろ過することは保存期間が長くなるほど, 明らかににおいを好ましい状態に保持するのに役立っていることが認められた.
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