日本家政学会誌
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総務庁統計局「家計調査」における「世帯主」概念をめぐる問題点
伊藤 セツ居城 舜子
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1989 年 40 巻 8 号 p. 663-672

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抄録
この論文で, 著者らは, 第1に, 総務庁統計局「家計調査」を取り上げ, 「世帯主」という用語が用いられることによって, どのような具体的難点が生じるかを, 家庭経済学の視点から分析した.第2に, 国連やアメリカ合衆国での「世帯主」用語に関するこれまでの議論を追った.第3に, わが国現行「家計調査」を, どのように改善すれば, 夫と妻の世帯における経済的分担を正確に反映する統計が得られるかを考察した.
その結果の概要は, 次のとおりである.
1. わが鼠の現行「家計調査」では, 勤労者世帯の収入の主体は, 「世帯主」とその「妻」および「他の世帯員」の3本立てである.「世帯主」の定義は「この世帯の家計費の主たる収入を得ている人」であるから, 「世帯主」の対語は性に関わりなくその「配偶者」であるべきであるにもかかわらず, 「妻」を対語として置いている.そのことから, とくに, 世帯における夫と妻の経済的分担が正確に把握できないことが明らかになった.
2. 国連およびアメリカ合衆国では, 1970年代から世帯主 (“Head of Household”) という用語が問題にされてきたが, とくにアメリカ合衆国では, 1980年代に入って, センサスやCESで “Head of Household” という用語を廃止し, “Reference Person” カミ採用されている.
3. 著者らは, 「家計代表者」という用語を導入し, さらにそれを夫, 妻, その他の世帯員と3区分することによって, 世帯内の夫と妻の経済的分担の度合いをより正確に把握することができることを提案した.
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