抄録
これまで, 一般に透湿性は, 1つの平面状の布の表面に水蒸気圧差をもうけて, 一定時間にその窃を透過する水蒸気量によって評価し, 透湿性が大きければ快適であると考えられがちであったが, 皮膚表面空間層の水蒸気圧をできるだけ低くすることが快適性につながるとの考えのもとに, 低温プラズマ処理により表面のみを親水化あるいは疎水化した場合に, 重ね着した衣服の層間水蒸気圧にどのような影響をおよぼすかについて, ミズリー型シミュレーターを用い, 短時間に起こる水蒸気圧変化を動的に測定して, 次のようなことをみいだした.
(1) 不感蒸泄に相当する水蒸気法の場合, 繊維自身の吸湿性に比例して層間水蒸気圧は低くなるが, 表面親水化および表面疎水化のいずれも層間水蒸気圧には大きな影響はおよぼさない.
(2) 発汗に相当する水滴法の場合, 布がぬれやすけれぼ水が速く蒸散する.ウールやポリエステルの表面親水化は有効で, 布がぬれやすくなって水滴が広がり, 皮膚表面空間層の水を速やかに蒸散する.
(3) 水滴法の場合, アクリルの表面疎水化は有効である.綿は初期においては疎水化の効果が認められる.しかしその効果は持続せず, 時間の経過とともに綿本来の性質を示すようになる.
(4) 一般的に, 透湿性がよいから快適だと考えることはできない.