日本家政学会誌
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大正デモクラシー期の「婦人之友」誌にみる住生活改善 (第一報)
「婦人之友」誌の特徴と住生活関連記事の経年的動向
久保 加津代
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1992 年 43 巻 12 号 p. 1223-1228

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抄録
大正デモクラシー期の住生活の実態分析をとおして, 生活者である主婦たちが, 住様式の変容過程にどうかかわったかを考察するという目的のために, この時期の「婦人之友」を分析した.「婦人之友」はつぎのような特徴をもっている.
1) 「婦人之友」は近代的な家庭生活像を求めており, 新しい住様式の創造に積極的にかかわろうとする姿勢がみられる.
2) 「婦人之友」の主たる読者層は都市の中流階層であり, 彼らの住宅規模は「中流住宅」の規模とほぼ一致する.しかし, 「婦人之友」の読者は精神的態度の面で特徴をもっており, 中流階層のなかでも1930年に「全国友の会」を組織するほど, 生活の近代化・合理化に積極的・研究的姿勢を示し, 実践のエネルギーをもったものが多かった.
また, この時期の住生活関連記事に関してはつぎのようにいえる.
1) 記事全体に占める住生活関連記事の比率は決して多くないが, 住宅プランや住み方・住居観に言及したものが多い.
2) 読者の投稿記事が多いので, 生活者である主婦の家族本位志向・簡素化志向などの住居観が採集できる.
3) 「婦人之友」は社会状況による影響の大きな雑誌である.大正時代には新しい近代的な住様式を志向するものが多いが, 昭和に入ると工夫に関するものが多くなる.1935年以降はこうした傾向がますます強くなり, 新しい生活を求めるという雰囲気はみられなくなる.
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