日本家政学会誌
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植物色素による染色
-サフランおよびくちなし抽出液による染色-
高岡 昭三好 久美子近藤 光子
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1992 年 43 巻 4 号 p. 303-309

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抄録

本研究では, 香辛料として市販されているサフランとくちなしから水溶性の色素を抽出し, その抽出液の安定性を紫外・可視吸収スペクトルの変化から調べたのち, 絹羽二重を染色して, その色彩をCIE (1986) Lab表色系の数値から調べた.また高速液体クロマトグラフで染色前後の色素の展開・分離を行い, 比較した。その結果, 明らかになったことを要約すると, 以下のようになる.
(1) サフランとくちなしから煮沸で抽出した液の可視部の極大吸収λmaxはほぼ同じ位置に存在する.
(2) 抽出液を室温下で机上に放置すると可視部に存在するλmaxの吸光度は, 時間の経過とともに減少するが, くちなしよりの抽出液は, サフランよりの抽出液より変化が少ない.
(3) 抽出液にレアスコルビン酸ナトリウムを添加するとサフランの場合は, 48時間放置しても吸光度は変化せず安定であるが, くちなしの場合はその効果が認められない.
(4) サフランとくちなしよりの抽出液で絹羽二重を染色した場合の色彩は, 染色濃度の差異はあるものの色相と色調はほぼ同じである.また, いずれの場合もL-アスコルビン酸ナトリウムの存在下でpHが低いほど染着性がよく, 洗濯および耐光堅ろう度も3~4級以上で, ある程度実用に耐えうる.
(5) 高速液体クロマトグラフによりサフランとくちなしよりの水抽出色素を展開・分離すると, 10種類以上に分離できた.そのうちの5種類は, 同じ retention timeである.またピーク面積よりみて主要色素は類似しており, 染色中に変化した色素もほぼ同じであることから, 染色に関与する色素はほぼ同じと考えられる.

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