1993 年 44 巻 8 号 p. 665-670
本論文は, 二種類の異なった型の靴が歩行時および安静時の温熱生理反応と被服気候にどのように影響するかを, フィールドと実験室での実験によって遂行した.実験条件は, フィールドでは気温23℃~28℃ (炎天下), 18℃~23℃ (日陰), 湿度55~65%RH, 輻射熱28℃~37℃, 実験室では, 室温28±1℃, 湿度55±5%RHであった.主な結果は, 1) 両条件下における直腸温は, 草履よりも半長靴着用時において有意に高く維持された。2) 足底と足背の皮膚温は, 草履よりも半長靴において有意に高く保たれた.3) 被服気候のうち足底の靴の温湿度は草履よりも半長靴において有意に高く保たれた.これらの結果を温熱生理学の視点より論じた.草履は, 足から外界へのドライおよびウエットな放熱に対して有利なように思えた.このことが中核温の上昇の抑制を導いたと考察した.