抄録
調味のだし材料として古くから使用されている鰹節, 煮干しのエキス成分の比較を, ゲルろ過分画, 官能検査, アミノ酸分析および核酸塩基類の分析で行い, 次の結果を得た.
1) 遊離アミノ酸含有量はいずれもヒスチジンが特別多く, 他は鰹節でリジン, アラニンが, 煮干しでプロリン, リジン, アラニン, グルタミン酸がそれぞれ多かった.
2) 核酸関連物質含有量は, IMPが両試料とも最も多く, 他の成分では鰹節にイノシン, ヒポキサンチンが多く, 煮干しにADP, AMPが多かった.
3) セファデックスG-25カラムによっておのおの6画分に分けることができ, 鰹節は低分子部分に核酸関連物質の強い旨味を呈したが, 煮干しは高分子部分から低分子にかけて旨味を有しており, 特に高分子側でペプチドのコク味, まろやかさを呈した.
4) 煮干しの旨味を呈するペプチドはグリシン, グルタミン酸, アラニンが主要な構成アミノ酸になっており, 分離ペプチド群ではアスパラギン酸 : スレオニン : セリン : グルタミン酸 : プロリン : アラニン : グリシン (1 : 2 : 2 : 2 : 2 : 2 : 4) の組成を有していた。