日本家政学会誌
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日本人の食物繊維摂取量と糖尿病発症の時系列分析
原島 恵美子辻 啓介中川 靖枝浦田 郡平
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1994 年 45 巻 12 号 p. 1079-1087

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抄録

総食物繊維 (TDF) の年次別摂取量を国民栄養調査結果から算出した.食品のTDF含量は, プロスキー法による分析値を参照した.各栄養素と糖尿病人口との関連は時系列分析により求め, 以下の結果が得られた.
(1) TDF摂取量は, 1947年の27.4gから1963年の15.8gまで急激に減少した.1963年以降はわずかな減少傾向にあり, 1987年のTDF摂取量は15.3gであった.1987年の各食品群からのTDF摂取比率は, 野菜類28.3%, 穀類23.6%, 豆類13.1%, 果実類11.6%であった.
(2) 糖尿病有病率と各栄養素との単相関係数は, 蛋白質 (特に動物性蛋白質), 脂肪において正の相関, 炭水化物において負の相関を示した.TDF摂取量が16.0gを下回る1965年頃より糖尿病有病率は急激に増加した.糖尿病有病率と各栄養素との時差相関係数は, TDFが6~17年遅れで有意な負の相関を示し, 10年遅れで負の相関が極大となった (γ=-0.939, ρ<0.001).
(3) 糖尿病死亡率と各栄養素との単相関係数は, 脂肪, 動物性蛋白質で正の相関, TDF, 炭水化物で負の相関を示した.TDF摂取量が16.5gを下回る1962年頃より糖尿病死亡率は急激に増加した.時系列分析によりTDF, エネルギー, 動物性蛋白質, しょ糖で年数をずらすことにより, より高い相関が得られた.TDFは0~17年遅れで有意な相関が得られ, 17年遅れでもっとも高い相関 (γ=-0.975, ρ<0.001) を示した.
日本人集団における糖尿病人口の急激な増加は, 脂肪, 蛋白質の摂取量の増大に伴い加速的に起こり, TDFの摂取量の減少とともに, 時間的な遅れを伴って糖尿病に関与していることが明らかとなった.

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