日本家政学会誌
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家族状況・居住状況が社会的ネットワークへ及ぼす影響
中国・四国地域の社会的ネットワークの現状と課題 (第 4 報)
長石 啓子浅田 幸子足立 啓子榎並 英子遠藤 マツヱ妹尾 勝子重川 純子時岡 晴美中川 忍子中間 美砂子冨士田 亮子
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1997 年 48 巻 9 号 p. 763-773

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抄録

中国・四国地域における中・高年期女性の社会的ネットワークに, 家族および居住状況が及ぼす影響について分析し考察した結果は次のとおりである.
(1) 家族ネットワークが中心である.緊急的交流ではより集中しており, 「災害」「急病・けが」という外的で緊急度の高い依存内容の場合に “近隣関係” リンケージがやや活性化される以外は “別居の親族” リンケージに依存している.
(2) 個人リンケージは, 無配偶・無子者は “職業関係” “幼なじみ・同窓生” と, 短期居住年数者は “幼なじみ・同窓生” と, 日常的交流において活性化している.“趣味・社会活動関係”者との「趣味・社会活動」リンケージは, 家族形態や居住歴に関係なく 30 ~4 0%の人が活用していて, 個人ネットワークの主体的・選択的形成への方向を示していると言える.
(3) 日常・緊急時における様々な交流内容において, 配偶関係および子との同居別と交流相手との間には, 関連の強さが認められる.
(4) 親との同別居・無配偶・無子・短期居住年数者はネットワーク利用度評価が低く, 自主的利用努力の程度も低い.関連の強さで最も数値が高かったのは, 配偶関係および子との同別居と「町内行事への参加と世話」に対する利用努力との間であった.
以上の実態から無配偶・無子・短期居住年数者の場合が今後の個人リンケージ活性化の方向, すなわち個人ネットワークのあり方を示唆していると考えられる.それは, 無配偶者や子どものない人は一人で生活していかなければならない状況におかれる場合が多く, そこでのリンケージ活性化の状況およびネットワークへの利用度評価や拡大希望そして利用努力の実態は, より多くの人の近未来の姿とも言える.今後, 核家族化や少子化, 結婚しない人の増加等で小家族化傾向が進み, 都市化の進展に伴う集合住宅の増加と共に近隣関係の希薄化も考えられることから, 無配偶・無子・短期居住年数者の増加が予測される.したがって, 無配偶者や子どものない人をはじめ短期居住年数者等の個人リンケージの活性化を支援して, 積極的に交流利用努力が行われ, 現在の低い交流利用度評価が高まるシステムが望まれる.また, 「趣味・社会活動」を中心とした個人・家族の主体的・選択的なインフォーマルなネットワークを強化できるフォーマルな活動や, 混合的なセミフォーマルなソーシャルサポートシステムの形成が求められている.

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