日本家政学会誌
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民族服に対する意識の比較研究
韓・日女子学生の民族服に対する意識の差異
金 由美中川 早苗
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1998 年 49 巻 4 号 p. 417-426

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抄録

本報では, 韓・日女子学生の民族服に対する意識を関心, 評価, アイデンティティ, イメージ, 期待など態度の次元を設定して, 質問紙調査を行い, 単純集計やクロス集計をもとに, t検定とχ2検定によって, その差異 (共通点と相違点) を明らかにした.その結果は, 以下のとおりである.
(1) 民族服への関心は, 両国の女子学生とも非常に高いが, 着用・所有・持ちたいという願望やしきたりについての学習には差異がみられた.
(2) 民族服に対する評価は, 両国の女子学生ともファッション性や審美性, 社会性の側面を高く評価しているが, 韓国の女子学生の評価の方がさらに高い.しかし, 合理性の面についての評価は両国の女子学生とも低いが, 日本の女子学生の方がさらに低い.
(3) 民族服に対するアイデンティティは, 日本の女子学生より, 韓国の女子学生の方が高く, 民族を象徴するものとして, 心のよりどころや民族のアイデンティティとして, また伝統文化として強い愛着心と誇りを持っており, すべての項目で差異がみられた.
(4) 民族服に対するイメージは, 似たようなプロフィールを示したが, 韓国の女子学生は韓服に派手な, 明るい, やわらかいというイメージを抱いているのに対して, 日本の女子学生は和服に上品な, 豪華な, かたい, 親しみにくいというイメージを抱いており, 差異がみられた.しかし, 似合う, 好き, 着たいについては両国の女子学生とも得点が高く差異はみられなかった.
(5) 民族服に対する期待については, 韓国の女子学生はどんどん改良し, 今の生活にあったものに生かしたいと思っているのに対して, 日本の女子学生は改良を望んでいない.しかし, 両国の女子学生とも民族服をいつまでも残したいという願望は強いことが明らかになった.
以上, 民族服に対する関心, 評価, イメージ, アイデンティティ, 期待のいずれにおいても, 多くの項目で両国の女子学生間に, 差異がみられたが, 特に民族服に対するアイデンティティに大きな差異がみられた.
第2報では, これらの差異を規定する要因として規範意識, 民族意識, 衣生活意識を取り上げ, 比較検討し, 第3報では, 相互の関連について考察する.
なお, 本報は日本家政学会第47回大会 (1995), 第48回 (1996) 大会において発表した.

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