日本家政学会誌
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阪神・淡路大震災による住宅・居住地選好に関わる住意識への影響
被災地域公団住宅居住者の場合
今井 範子
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1999 年 50 巻 3 号 p. 267-279

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抄録
阪神・淡路大震災による影響が大きいと考えられる住宅・居住地選好に関わる住意識についてその影響と変化を明らかにするため, 震度7地区かそれに近接する被災地域5地区の住宅・都市整備公団の賃貸集合住宅居住者を対象とし質問紙調査をおこなった.これらの変化は今後の住宅市場の動向に影響を与え, さらに住宅観の動向にも影響を与えるものである.住宅形式の選好に対し震災の影響のあった者では, 超高層集合住宅や高層集合住宅を選好する者は少なく, 中層集合住宅, 低層集合住宅を選好する者が多い.居住階についても中層階志向が強まっている.これらには地震当時のエレベーター停止による生活困難, 揺れの激しさからくる恐怖感, 住宅内部被害などを, 高い居住階において, より多く体験したことが影響している.所有形式については公的なものへの安心感から, 現住宅である公団賃貸住宅への志向が強くなり, とくに60~70代以上の高齢層に永住意識が高まっている.構造については, 木造在来構法を選好する者が少なくなり, ツーバイフォー構法を選好する者が多くなっている.立地の選好に対して震災の影響のあった者ほど郊外志向が強まり, 本震災において密集市街地の被害が甚大であったことを反映していよう.住宅および居住地選好については, 土地の状態, 住宅の構造, 住宅の密集度, 住宅の維持管理, 近隣関係・地域コミュニティ, 親族宅との近さ等, 重視する諸点が増加したことがわかり, 顕著な意識変化が認められた.
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