日本家政学会誌
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スポンジケーキの性状におよぼすバター添加温度の影響
前田 智子浅川 具美森田 尚文
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1999 年 50 巻 6 号 p. 571-579

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抄録

スポンジケーキの品質を客観的に評価するため, 小麦粉およびバターの混合過程に一定条件での手作業を確立し, バター添加温度の違いが生地と焼成後のケーキの性状におよぼす影響を明らかにした.スポンジケーキの材料配合は小麦粉 100g, 鶏卵 200g (卵黄 80g, 卵白 120g), 砂糖 100g とし, バターの添加量は30g とした.また添加温度はバター添加なしの対照, 40℃, 75℃, 98℃ の 4 試料とした.
(1) バターの添加温度が高くなると, 生地の比重は小さくなり, 気泡の消失を抑制したと推察された.
(2) バターの添加温度が高くなると, 生地中のバター粒子の分散性は良くなり気泡界面との付着も増加した.その結果気泡膜が強化され気泡の安定化にもつながったと考えられる.
(3) バターの添加温度が高くなると, ケーキの膨化率と比容積は大きくなった.
(4) バターの添加温度が高くなるとケーキはやわらかくなり, 弾力性に乏しく, 凝集性に富むようになった.
(5) 官能評価では, 物性値の結果で特に弾力性に乏しく凝集性に富んだ 75℃ の試料が, 口ざわりと口どけの良さで良い評価を得た.
以上の結果から, 高温のバターを添加することで生地に若干の熱が加わり, 卵中タンパク質の加熱変性とデンプン糊化が生じ, 焼成中気泡に十分な熱膨張をもたらしたと推察される.また生地中の水分含量は37.6~38.2% と試料間で有意差は認められなかったが, 添加されたバター中約 16% の水分はその温度が高温の場合には主にデンプンの糊化に使われ, グルテン形成を抑制し, ケーキの物性や官能評価に良い影響をおよぼしたと考えられた.

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