抄録
卵泡沫の気液界面に吸着したタンパク質におよぼすバター添加温度の影響を明らかにするため, 泡沫を遠心により分画した.分画された排液と凝固物に含まれるタンパク質成分におよぼすバター添加温度の影響を, 電気泳動法により検討した, 泡沫は, 混合卵泡沫 (卵黄40g, 卵白60g), 卵黄泡沫 (卵黄40g, 蒸留水52.8g), 卵白泡沫 (卵白60g, 蒸留水20.4g) の3種類の泡沫を調製した.バターの添加量は159, 添加温度は40±3℃と98±3℃とし, 対照としてバター無添加の試料を調製した.
(1) いずれの泡沫も凝固物中には, S-S結合を含む分子量20.0×104以上の高分子量のタンパク質が存在した.
(2) 高温のバターを添加した安定な混合卵泡沫は, その下層凝固物中にLDL, HDLとコンアルブミン, オボアルブミンを多く含んでいた.
(3) 混合卵泡沫は卵黄, 卵白単独ではなく, 主に乳化性に優れた卵黄のLDL, HDLと起泡性に優れた卵白のコンアルブミン, オボアルブミンを下層凝固物中に多く含むことにより, 泡沫安定性とケーキの品質を高めると推察される.