日本家政学会誌
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衣服の廃棄要因としてのスポット汚れ-その現状と対応-
小澤 玲子新井 理恵石川 ひとみ瀬戸山 望高橋 志帆藤井 薫片山 倫子
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キーワード: しみ, 調査, 衣料品, 廃棄物
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2001 年 52 巻 6 号 p. 523-531

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抄録

スポット汚れが原因で衣服の死蔵や廃棄が生じる実態を把握することを目的に, 女子学生90人および40歳以上の中高年女性55人を対象にしたアンケート調査を行った.また, 文献調査をもとに, 主なスポット汚れの対処方法を明らかにした.
(1) 衣服に付けた経験があるスポット汚れの種類で一番多いものは「醤油・ソース・ケチャップ」であり, 女子学生・中高年女性ともに共通していた.
(2) スポット汚れの対処方法で一番多いものは「家庭で処理した」例であり, 中高年女性では他に「クリーニング業者に依頼した」例も多かった.また, そのうちの約8割は汚れが落ちていた (「やや落ちた」例を含む).
(3) 「家庭で処理した」事例の中で落ちない汚れで最も多いものは「墨汁」であり, これは処理をした後に「輪じみ」のトラブルが発生したことも明らかになった.また, 「クリーニング業者に依頼した」事例の中で落ちない汚れは, 「食料品」が多かった.
また, 汚れが落ちず, 更に, 処理に伴い事故が発生した例の中で一番多い組み合わせは「綿・墨汁」であった.
(4) スポット汚れの処理に伴い発生した事故例の中で最も多い事故は, 対処方法にかかわらず「変色・色落ち」であった.事故発生後の衣服の取り扱いは, 女子学生の場合に着用している例が56.5%, 死蔵・廃棄される例は40.6%を示した.一方, 中高年女性では死蔵・廃棄される例が53.9%と女子学生に比べて高く, スポット汚れの処理に伴い発生する事故は衣服の死蔵や廃棄の原因につながっていることが明らかになった.
(5) 手軽に使えるしみ取り剤などは, ほとんど知られていないことがわかった.
(6) 文献調査により, スポット汚れの対処方法は一次処理として水溶性の汚れには水洗いや温湯, 油溶性の汚れにはベンジンなどの有機溶剤を用い, 二次処理で洗剤の使用をすすめる文献が多かったが, 原理などの解説はなかった.原理などを解説した対処方法のマニュアル作りとその普及が必要であることがわかった.

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