日本家政学会誌
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住様式からみた世代同居家族の住空間の問題点とそのあり方 (第2報)
中国都市集合住宅における世代同居家族の住生活と住意識に関する研究-四川省成都における-
談 麗玲今井 範子
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2004 年 55 巻 11 号 p. 853-866

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抄録

本報では, 中国の集合住宅における世代同居家族の住空間の使われ方と問題点について, 住様式の視点から検討を行った.その結果をまとめると, 以下のとおりである.
1. 客庁は, 家族共用で, しかも団らん, 接客, 娯楽など多機能に使われているため, その不満点として面積に関係なく, 十分な広さのある「45m2以上」においても, 両世代ともに「狭い」をあげている.世代同居家族は, より大きな客庁を求めていることがうかがえる.
2. 世代同居家族は家族が揃って一緒に食事するという家族慣習が大切にされているため, 台所, 餐庁に対して「自分たちの台所がない」「自分たちの食事室がない」という要求は少ない.世代同居住戸平面において台所, 食事室を世代分離する必要のないことが確認された.
3. 洗濯物を世代別に異なる場所で干すという住慣習を持つ世帯が多いことにより, バルコニーの不満点として両世代ともに「数が足りない」を多くあげている.世代同居住戸平面において洗濯物として機能するバルコニーは, 複数を設置することが望ましい.
4. 「トイレと浴室を別々にしたい」という要求は, 親世代, 子世代いずれにおいても存在するので, 世代同居住戸平面において, 「兼用衛生空間」の計画だけではなく, トイレと浴室を別々にするという日本式の衛生間の導入が可能である.
5. 本調査の対象世帯は, 三世代が最も多く, 調査対象の住戸平面は3室2庁1衛, 3室2庁2衛を中心としている.これらの平面は, 各世代の寝室を確保しているけれども, 余裕の空間は全くないため, 寝室の不満点として, 両世代とも「数が足りない」を多くあげている.世代同居住宅において, 世代別の就寝空間を確保するほか, 書斎などの余裕室を考慮していくことが重要である.
6. 自分が病気になった場合, 在宅介護を希望する親世代が多いため, 住宅の改善要求として, 「衛生間に手すりをつける」「共同階段に手すりをつける」をあげる親世代が多い.世代同居住宅の平面計画に当たっては, バリアフリー化を図ることが望ましい.

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