日本家政学会誌
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炭焼き加熱特性の解析 (第2報)
炭焼き食品のにおいの検討
石黒 初紀阿部 加奈子辰口 直子蒋 麗華久保田 紀久枝渋川 祥子
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キーワード: , 焙焼, 燃焼ガス, 香気成分, 鶏肉
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2005 年 56 巻 2 号 p. 95-103

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抄録

一般には炭火で調理されたものがおいしいと評価されることは多いがその根拠は明らかにされていない.そこで, 伝熱量および放射の割合を同等にした数種の熱源で鶏肉を焙焼し, 官能検査, においの成分分析を行った.さらに, 試料を焙焼する熱源から発生する燃焼ガスの成分分析を行った.官能検査の結果, においと総合的評価は[炭火焼き]と[ガス網焼き]を比較すると, 有意差は認められなかったが[炭火焼き]が好まれる傾向がみられ, さらにその匂いの差は識別できるものであった.そこで, においについて機器測定を行った.
その結果, エレクトロニック・ノーズによる分析結果からセンサーが測定できるにおい成分の量は[ガス直火焼き], [ガス網焼き], [ヒーター焼き]は同等であるが, [炭火焼き]は他の熱源のものより低いことがわかった.このため, 炭火加熱により生じたにおいに何らかの違いがあることが考えられた.また, GCMSによる分析結果から, 官能検査により炭火加熱をした鶏肉の方が好まれた要因は, 香気成分組成において好ましくないにおいを持つ脂肪族アルデヒド類の割合が焼き網に比べ少なく, 香ばしい香りを有するピラジン類やピロール類の割合が多いためと考えられた.
鶏肉の焙焼香の違いの原因は, 燃焼ガスにあるのではないかと考え, 燃焼ガスの測定を行った.その結果, 炭の燃焼ガスには, 焼き網よりも還元性の強い一酸化炭素や水素が多く含まれ, 酸素の含有量が少なかった.
なお, この燃焼ガスの組成の違いと香気成分の生成との詳細な関連についてはさらなる検討が必要である.

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