日本総合健診医学会誌
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人間ドック上部消化管X線検査の画像情報損失
三山 鎮皓武藤 孝司
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1998 年 25 巻 1 号 p. 36-42

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抄録

人間ドック (以下, ドック) 上部消化管X線検査 (以下, UGI検査) の一時貸与フィルム返却状況を画像情報の損失率の点から評価し, ドック受診者の行動様式およびドックに対するニーズなどについて検討した。
対象は, 平成7年および平成8年の日帰りドックUGI検査受診者で, 各年16,787名 (男12,268名/女4,519名, 平均年齢49.0歳)/16,764名 (男12,266名/女4,498名, 平均年齢49.3歳) であった。各年のUGI検査フィルムの一時貸与292名/288名に対し未返却は216名/226名で, 各判定者数に対する未返却数 (損失率) は全体で各年ともに1.3%だが, 判定が重篤なほど高い傾向がみられ, D判定 (内視鏡による精検を要す) での損失率は11.0%/10.0%であった。また平成7年のフィルム一時貸与者292名のうち141名が平成8年にドックを再受診したが, 104名が未返却であった。この104名中, 平成7年にD判定かつ平成8年もD判定を受けた者は13名で, 平成8年のD判定全体の0.9%であった。さらにドックと同施設で内視鏡二次検査を受けた者のうち, 各年の91.6%/98.3%がドックでD判定であった。逆にD判定の41.0%/39.8%がドックと同施設で内視鏡検査を受けたが, これらの者でUGI検査フィルムの一時貸与を希望したのは僅少であった。
検査フィルムの保存義務は検査を施行した医療機関にあることを十分認識し, 画像情報損失を回避する努力をするだけでなく, 前回検査フィルムが比較参照できるシステムの構築がドックUGI検査の効率や精度向上に寄与すると考えられる。また, ドックの受診や受診施設は必ずしも地理的条件・自発的意志では決定されず, 二次検査や治療もドックと異なる施設で行なわれることがあり, フィルムの一時貸与の多くは他施設での二次検査受診のためと考えられる。よってドックには医療情報に関して, 平素は専門家に預けておき必要に応じて自由に出し入れできる「個人データバンク」としての利用形態・ニーズもあると考えられる。

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