日本総合健診医学会誌
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便潜血を通して見えているもの
―結腸癌ふるい分けに有用な3日法定量結果の読み方―
清島 啓治郎田近 明男川島 徳通村尾 久雄貝瀬 実三宅 道高野口 真見置 衛半田 文利
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2001 年 28 巻 4 号 p. 411-421

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抄録
定期的に健診受診を反復する会員制受診者を対象として大腸癌発見に努める間に, 免疫定量3日法便潜血検査の特異度を高める潜血濃度数値の読み方を考案し, 結腸癌発見率を3倍以上に高めることができた。特異度向上に貢献したのは, 精査適応決定にあたり, Cut-off値を30ng/mlに下げ, この基準を超える便が連続的に見られることを, 単一便の潜血濃度の高さよりも重視する方法であった。この方法で適応を決め精査すると, 結腸癌と同様に多数の結腸腺腫が発見され, これらの結腸癌と結腸腺腫はいずれも, 切除すると次回健診の潜血濃度はそろってゼロ近く下がる点で酷似しており, 切除前の便に潜血が存在した原因は, 両者に共通する「隆起」という結腸壁の形の異常であったと考えられた。この推論を裏づけるべく, 結腸癌38例と結腸腺腫86例につき, 切除の直前と直後の744個の便の潜血濃度を比較し, 便潜血の連続陽性と相関するのは, 隆起の存在であると確認できた。便潜血を通して見えているのは「癌ゆえの出血」ではなく「隆起ゆえの出血」である。結腸以外の大腸 (直腸および肛門) からの出血は便潜血検査では偶発的にしか拾えず, 直腸癌を漏らさぬためには便潜血以外の検査 (内視鏡・注腸X線) が必要である。
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