人間と生活環境
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茨城県に於いて東日本大震災により県内外へ避難した子どものいる世帯の生活状況
田中 宏子乾 康代
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2015 年 22 巻 2 号 p. 93-102

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抄録

本研究は、東日本大震災発生時に茨城県内に居住し、震災によって避難を強いられた住民を対象として、災害発生1年半後に追跡調査を行い、取得したデータのうちから、"子どものいる避難世帯の生活状況"というテーマを設定して研究を行った。子どものいる世帯の避難生活は、原子力災害からの避難が背景にあるがゆえに、周辺被災地である茨城県でも、特異な心理、生活上の困難を、他の世帯型より多く抱えていることが明らかとなった。震災により茨城県外に避難した若い子育て世帯の意向は、帰還が約1割、他所で定住が約5割であり、将来どこに住むかわからない避難継続は約4割であった。原子力災害がもたらす放射能に対する恐怖感に基づく避難は、いずれ元の場所に戻るという明快なものではなく、複雑で深刻な局面を包含していた。また、避難継続世帯は、帰郷世帯や避難定住世帯に比べて、子どもの健康問題を抱える世帯が多かった。

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© 2015 人間-生活環境系学会
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