子供の体温調節は,成人に比べて,暑熱環境における運動中の体温調節能力が劣ると報告されてきた。この研究は,安静時の子供を暑熱と風に暴露した時の温熱反応と熱バランスを検討した。10人の思春期前期少年と8人の男子大学院生を夏期において被験者として採用した。各被験者は,最初に温熱的中性室(気温28℃,相対湿度50%,気流0.2m/s)で安静状態を計測した後に,暑熱室(気温35℃,相対湿度70%,気流0.2m/s)に移動し1時間滞在した。さらにその環境下で被験者の前面に置いた送風装置より気流速1m/sの風を30分間被験者に暴露した。全身発汗量(Msw,t),局所発汗量(Msw,l),背部と上腕における能動汗腺数,直腸温,9カ所の皮膚温,代謝量が測定された。両群のMsw,lとMsw,lは同様であったにも関わらず,少年の背部と上腕における能動汗腺数は男性よりも有意に多かった。両群のTreの変化は同様であったが,少年の平均皮膚温(Ts)は暑熱暴露中,男性よりも有意に高くなった。風に暴露中の乾性放熱量を除くと,両群の代謝量,放射と対流による放熱量および熱バランスもまた同様であった。少年の乾性放熱量は男性よりも有意に大きくなった。これらの結果は,暑熱暴露中の,思春期前期少年の体温調節能力は男性とほぼ同様であることを示唆してしいる。