人間と生活環境
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感覚的消臭の変調作用における嗅覚受容体応答の変化
光田 恵竹下 剛司花岡 早苗近藤 早紀立松 健司黒田 俊一
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2023 年 30 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

芳香臭を悪臭に混合し,悪臭のにおい質を変化させる感覚的消臭の変調について,その作用機序が嗅覚受容体応答から明らかにできるかを検討した.n-吉草酸とシトラス調の芳香を混合し,官能評価試験とヒト嗅覚受容体の応答測定を行った.官能評価試験では,混合サンプルで,臭気強度の変化を伴わず,n-吉草酸のにおい質の変化が確認されたため,変調が起こっていると判断した.一方,ヒト嗅覚受容体発現セルアレイセンサーを用いた測定では,n-吉草酸に応答し,芳香液には応答しない受容体(OR51E1)で,混合サンプルに対して応答のピークが後退し,応答時間と強度が増加した.このことから,n-吉草酸に対するOR51E1 の応答が,芳香液の同受容体へのアロステリック効果により,変調を引き起こすことが推察された.以上から,感覚的消臭の作用機序は,ヒト嗅覚受容体を解析することにより明らかになり,また定量的に取り扱うことが出来る可能性が示された.

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© 2023 人間-生活環境系学会
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