室内湿度の低い冬期を中心に、眼の乾燥による不快の訴えが多数報告されている。湿度によって眼表面を保護する涙液層の安定性や厚さが変化することが示されているものの、これらと眼の不快の訴えの関連は明らかでない。そこで本稿では、基礎的検討として、湿度変化の際の涙液層の状態量の変化が眼の乾燥感および不快感に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。SCL(ソフトコンタクトレンズ)装用者9 名を含む18 名を対象に、複数の湿度条件下で眼に関する生理・心理量を測定し、マルチレベルモデルを用いて個人内・個人間それぞれにおける項目間の相関および因果関係を分析した。この結果、複数の涙液層の状態量の個人内変動・個人差が眼の乾燥感・不快感と関連しており、裸眼では涙液層の安定性が低い時ほど、SCL 装用者ではレンズ上の涙液量が少ない時ほど乾燥感・不快感が強いことを示した。