冬季に強い北西の季節風が吹く茨城県南地域には、防風や防火のために植えられた屋敷森や生垣などの伝統 的な緑化デザインが数多く存在する。これらの緑化デザインは、冬季において寒冷な環境を緩和する効果があるこ とが先行研究により明らかになっているが、夏季における環境調節効果に関する研究は十分ではない。本研究では、 茨城県つくば市洞下集落の屋敷森および石岡市大増集落のイキグネと呼ばれる高生垣を対象として、伝統的な緑化 デザインによる暑熱環境緩和効果の検証を目的として、2017年7月および8月に両地域における小気候観測調査を 行った。その結果、屋敷森の中が特に低温になることが明らかになった。また、屋敷森が消失したエリアの住宅地 と比較すると、屋敷森に囲まれた住宅地では相対的に約 1℃低温になることが明らかになり、屋敷森による暑熱環 境緩和効果が示された。一方、イキグネによる暑熱環境緩和効果は明確には現れなかった。