抄録
胸水貯留は,原因により治療方針が異なり,その鑑別は重要である。今回,著者らは高齢男性の右片側性胸水貯留患者で胸水の試験穿刺を行い,Lightの診断基準では滲出性胸水に分類されたが,胸水NT-pro-BNP値から心不全による胸水と診断し得た貴重な 1 例を経験した。症例は 82 歳,男性。3 ー 4 日程前より咳嗽・呼吸困難感を自覚し,胸部単純写真で右片側性胸水貯留を認めた。胸水の試験穿刺を施行したところ,Lightの診断基準では滲出性胸水に分類されたが,胸水NT-pro-BNPは1396Pg/mlであり,血WNT-pro-BNPと同様に上昇していたことから,心不全による胸水と診断した。総合診療医はLightの診断基準では,滲出性胸水を確定診断できない場合があること,胸水NT-pro-BNPは心不全による胸水の診断に有用であることを知っておく必要がある。