抄録
現在矯正施設においては,職業,生活期リハビリテーションによる被収容者の社会復帰を目指しており,産業の各分野における人材の供給源となっている。一方少子高齢化,過疎化が急速に進行する我が国では未診断,未治療の高齢認知症患者や発達障害者が触法行為を反復し矯正施設に収容される事例が激増している。その社会的背景としては地域自治体の健診システムの破綻や老年病科,小児科専門医の不足,偏在が存在すると考えられる。被収容者のリハビリテーションを阻害する因子としては薬物中毒による高次脳機能障害や重度精神障害が主なものであった。矯正施設では職員の献身的な教育,指導により,地域包括ケアシステムの一翼を担いながら我国の市民社会の安定と産業振興に寄与している。