2019 年 15 巻 4 号 p. 391-394
本研究は,当院入院患者の退院先の希望を調査し,希望通りの退院先とならなかった例について,その要因を分析したものである。退院希望先は,対象の 181 名全員が自宅ないし入院前に生活していた施設であった。希望通りの退院先とならなかった 5 名の原因を大別すると,①要介護者を支える家族の高齢化と介護力の問題,②高い医療依存度,③独居の不安であった。希望する退院先に戻れない要因の背景には共通して,患者や家族が持つ大きな不安の存在があった。退院後の生活では,病気を抱えながら生活する上で起こりうる様々なリスクが想定される。そのリスクを回避し,安心感を得るための手段として,退院先の変更が行われたと考える。患者の希望を叶えるためには,退院先を変更する以外の方法で,不安を解消する支援が必要と考える。