日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
15 巻, 4 号
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原著
  • 瓜生 恭章, 高原 良典, 山本 智英, 原田 博雅
    2019 年 15 巻 4 号 p. 364-369
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    【目的】熱中症,暑気中り(夏ばて)は,熱波の持続以外の病因は不明である。不顕性副腎不全はストレスを受けると症状が出現する。熱波の持続が不顕性副腎不全患者にとり,熱中症,暑気中りを発症する可能性がある。 【方法】救急搬送の熱中症 2 例,夏期に下痢がある治療中バセドウ病 1 例,ヒドロコルチゾン(HC)補充中の不顕性副腎不全 7 例は,再度の病歴聴取で過去 2,3 年の夏に消化器症状を聴取した。低用量(1-µg)コートロシン試験は,熱中症例は状態安定後,HC 補充を受ける不顕性副腎不全患者は 2 日間補充中止後に実施した。コルチゾル 30 分値 20 µg/dlを境界値とした。 【結果】全例コルチゾル 30 分値は境界値以下,HC 10~15 mg/day補充後,症状の再発はない。 【結語】不顕性副腎不全は熱中症,暑気中りの重要な原因になり得る。補液で状態の改善しない熱中症例には水溶性HCの点滴静注,毎年夏に消化器症状を繰り返す例には低用量コートロシン試験が望ましい。
症例報告
  • 宮口 和也, 廣岡 伸隆, 石澤 圭介, 中元 秀友
    2019 年 15 巻 4 号 p. 370-373
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    Non-episodic angioedema with eosinophilia(NEAE)は,好酸球性血管浮腫の中でも特に本邦に多く,再発せず,自然寛解する疾患である。本疾患は,時に症状が強く,ステロイド投与を必要とする。当科に外来受診した 5 例についての症例集積調査を実施し文献的考察を加えた。ステロイド導入を行わなかった症例は自然寛解を認めたものの,浮腫による張り感や関節痛が約 8 週間残存した。本疾患は働き盛りの若い女性に多くみられ,症状残存がQOLの低下をきたすことから,ステロイド加療による早期介入が考慮される。
  • 村上 佑美, 高橋 広喜, 藤川 祐子, 今村 淳治, 岡 直美, 鈴木 博義, 森 俊一, 鈴木 森香, 鵜飼 克明
    2019 年 15 巻 4 号 p. 374-379
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 71 歳の男性。明らかな誘因なく腰痛と腹痛が出現し,近医にて血小板低値を指摘され,当科へ紹介となった。来院時不穏状態を認め,高熱,頻脈,頻呼吸を呈していた。四肢や体幹部に紫斑を呈し,両側下肢にチアノーゼを認めた。敗血症による播種性血管内凝固症候群が疑われ,ICUにて加療を開始した。入院約 6 時間後に血液培養 2 セットからグラム陽性球菌が陽性となった。入院約 8 時間後に血圧が低下し,昇圧剤投与を開始するも改善が得られず,入院約 28 時間後に死亡となった。病理解剖にて両側副腎皮質に出血を伴う急性壊死を認め,G群溶連菌感染症により発症したWaterhouse-Friderichsen症候群と診断した。経過が急速な重症感染症において,昇圧剤での効果が不十分な場合は,副腎皮質出血壊死による急性副腎不全の併存を考慮し精査ならびに加療を行う必要があると思われた。
  • 石川 詩織, 高橋 雄介, 真壁 武一, 長谷川 修
    2019 年 15 巻 4 号 p. 380-384
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    無症状期にCTで肝内高濃度腫瘤として表現され,2 ヵ月後の症状発現時にはさらに大きな典型的低濃度腫瘤となった肝膿瘍例を経験した。急性心不全で入院した 93 歳女性の腹部単純CTで,肝S6 に 5 cm大でやや高濃度を呈する境界明瞭な腫瘤が偶発的に認められた。腫瘍マーカーの上昇も,発熱や炎症所見もみられず,超音波検査で高エコーを確認したのみで,外来で経過観察とした。2 ヵ月後に,発熱と右季肋部痛のため独歩で来院した。CTで肝内腫瘤は前回より拡大し,境界明瞭かつ低濃度の膿瘍像を呈した。抗菌薬投与とドレナージで治療し,退院後 1 年後には,縮小し器質化した低濃度腫瘤像となった。一般に肝膿瘍は,単純CTでは肝実質より低濃度を示し,辺縁部がやや高濃度に描出される。しかし,肝膿瘍のごく初期や治療後などでは充実性腫瘤像を呈することがある。本例でも当初この形をとり,診断遅延につながった。肝膿瘍が考慮される場合には,臨床 症状,画像・血液検査所見を含めて,注意深い経過追跡が重要であろう。
  • 國友 耕太郎, 辻 隆宏, 清川 哲志
    2019 年 15 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    大球性貧血を主訴に当院を受診した 78 歳女性。血球像では,過分葉好中球を認め,骨髄検査では,巨赤芽球様変化を認めた。生化学検査では,LDHが上昇し,ハプトグロビンが著明に低下していたが,直接,間接クームス試験は陰性であった。上部消化管内視鏡検査では,萎縮性胃炎を指摘された。血清ビタミンB12 および葉酸値は正常値であった。骨髄異形成症候群が鑑別にあがったが,臨床症状と検査所見から,悪性貧血が強く疑われた。試験的にメコバラミンを投与したところ,投与開始 2 週間後の血液検査で,大球性貧血は改善した。抗内因子抗体が陽性であったことから,最終的に悪性貧血と診断した。血清ビタミンB12 の偽正常ならび偽高値の悪性貧血は,これまで 11 例報告されており,抗内因子抗体が,ビタミンB12 の自動測定系に影響を及ぼしていることが推察されている。臨床症状や検査所見から,悪性貧血が疑われる場合は,空腹時総ホモシステインの測定か,メコバラミンの経口投与が診断的治療として有用と考える。
短報
特別寄稿
  • 甲斐沼 孟, 中場 寛行
    2019 年 15 巻 4 号 p. 399-402
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    背景:救急診療は現代に欠かせない医療分野である。当院救急センターは,年間 4000 件を超える救急搬送総数を担い,2014 年 4 月より救急専従医が 1 名就任し,平日日勤帯は初期研修医と共に様々な重症度の救急例に応需する事で救急車対応を概ね一元化し,診察後に入院が必要な患者を担当科に振り分ける。 目的:救急専従医による救急車対応一元化の効能を検討したので報告する。 対象:2015 年 1 月~2017 年 12 月迄を対象期間とし,各年毎に救急搬送数や応需率を調査した。 結果:総救急搬送数は 13025 例(2015 年 3969 例,2016 年 4412 例,2017 年 4644 例)で年々増加傾向を認めた。全搬送例の内,4682 例(36%)を救急専従医が初療担当した。夜間当直帯も含めた総救急応需率は 68%(13025 例応需 /19092例依頼)で,平日日勤帯の応需率は 94%(5692 例応需 /6045 例依頼)であった。 考察:平日日勤帯に救急専従医により一元的に救急車応需を判断し初期診療やadvanced triageを行う事で総救急搬送数増加や応需率高値の観点から病院の救急車対応は改善し,望ましい地域医療貢献が出来ると考えられる。 結語:当院の救急車対応一元化の効能を検討報告した。
  • 池田 貴英, 森田 浩之
    2019 年 15 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    第 18 回全国大学病院総合診療部連絡協議会の開催前に大学病院総合診療部の現状と新専門医制度の動向についてアンケートを実施した。アンケート回収率は 65.8 %。診療体制は他科と独立しているが,外来患者数や入院患者数は施設により大きく異なっていた。2017 年度と比較した新専門医制度での専攻医数は内科では変わらず多数であったが,総合診療では減少している施設も多かった。育成する予定の専門医は内科と総合診療の両方が多かった。総合診療専門医専攻医の加入のあった施設では,関連施設や関連病院医師数が多く,家庭医療専門医が多かった。
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