2021 年 17 巻 2 号 p. 157-163
医療者の診療拒否の是非が争われた裁判例 55 件の分析を行ったところ,応招義務違反など医療者の行為の違法性が認められた裁判例は 9 件にとどまった。平成 17 年 10 月以降においては,診療拒否の是非が争われた全ての裁判例において医療者の行為の違法性が否定されていた。患者側の迷惑行為を原因として診療拒否がな された類型については,過去全ての裁判例において医療機関側の主張が認められており,そもそも患者の主張するような診療拒否自体が存在しないと認定する裁判例もみられた。患者側の迷惑行為などで診察治療を実施す ることが困難な事案においては,診療の提供を行わないという選択肢もあり得ることが示唆された。