抄録
症例は小児期に水痘罹患歴のある 67 歳女性。来院 2 日前より 38 度台の発熱,左耳介・頚部から全身へ広がる紅色小丘疹を認め,来院前日より咽頭痛,来院当日に呼吸困難を自覚して救急搬送され,頸部CT検査で急性喉頭蓋炎を疑われ入院した。入院翌日には丘疹の一部に水疱を生じ始めたため,汎発性帯状疱疹を考慮して抗
ウイルス薬の投与を開始し,また喉頭蓋炎のgradeでは前日のⅠ期から,Ⅱ期へと喉頭蓋腫脹が増悪したため緊急気管切開を行った。ベタメタゾン 8 mg/日の静脈投与も 5 日間行い喉頭蓋炎は改善して第 9 病日に気管チューブを抜去した。以降,左声帯麻痺による誤嚥を繰り返して第 35 病日に胃瘻造設術を要したが,第 60 病日に軽快退院し,声帯麻痺も改善したため第 329 病日に胃瘻抜去した。ペア血清での抗体価パターンも踏まえ,本症例は水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化により急性喉頭蓋炎,声帯麻痺を併発した稀な一例であると診断した。