抄録
症例は 68 歳女性。25 年前にC型慢性肝炎に対してインターフェロン単独療法を行いウイルス学的著効となっていた。5 年前から糖尿病を当院で加療中であり,スクリーニング検査として行った腹部超音波検査で以前には認めなかった肝腫瘤を指摘されため当科紹介となった。腫瘤はダイナミックCTとGd-EOB-DTPAによるMRIでは典型的な肝細胞癌の所見ではなかったため,超音波ガイド下に生検を行ったところ高分化型肝細胞癌と診断された。肝切除術を行い 1 年経過しているが肝癌の再発はなく,患者本人の全身状態も良好である。抗HCV療法は肝発癌のリスクを低下させるが,肝発癌がなくなるわけではないため全ての抗HCV療法後の患者は定期的な肝癌スクリーニングが必要である。特にHCV治療後の肝発癌のリスクファクターとしてあげられる高齢,男性,肝線維化進展,アルコール摂取,肝脂肪化,糖尿病がある例は注意して経過観察する必要がある。