抄録
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はSARS-CoV-2による感染症であり,世界的な大流行を起こしている。変異株による感染拡大が危惧されているが,厚生労働省や東京都保健福祉局による変異株スクリーニング検査やゲノム解析の報告は,いずれも多施設での報告であり,単一地域での縦断的な疫学情報は限られている。今回,荒川区と足立区における変異株の動向を明らかにするため,当院で入手したSARS-CoV-2 PCR陽性検体( n=106)のゲノム解析結果を調査した。その結果,東京都のゲノムサーベイランスによる系統別検出と同様に,B.1.1.214系統から R.1系統,B.1.1.7系統(アルファ株)へと移行し,B.1.617.2系統(デルタ株)が出現した。それぞれの変異がワクチン効果,感染性や重症度に関与しており,継続的な変異株の分子疫学的評価が必要である。