日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
18 巻, 1 号
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原著
  • 島田 恵, 荒川 聡, 宮川 滝彦, 川邊 将之, 後藤 英里子, 西山 雷祐, 小澤 秀樹
    2022 年 18 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    本研究は当院でのCOVID-19の抗原定量検査を利用した疑似症患者対応の有用性を明らかにする事を目的とした。 【方法】調査対象は 2020 年 2 月から 2021 年 4 月までに当院外来にて遺伝子検査,抗原検査を施行し各々 751 例,1525 例である。COVID-19検査体制による疑似症患者の入院状況について調査した。 【結果】COVID-19検査は 2020 年 2 月からまず外部検査機関を利用したPCR検査のみで開始,5 月より抗原定性検査を併用して対応した。その後,7 月よりLAMP法を院内で開始したが,疑似症患者の減少にはつながらず,10-12件/月の疑似症入院が発生した。8 月より抗原定量検査が開始され,150-200 件/月で検査を施行,疑似症入院数は減少し,2021 年 2 月以降は疑似症ベッド利用は発生しなかった。 【結論】抗原定量検査を利用したCOVID-19検査体制は疑似症患者の入院対応に有用性が高い。
症例報告
  • 栗原 夕子, 高松 正視, 安西 秀美, 定平 健, 鈴木 貴博
    2022 年 18 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 47 歳の女性。8 年前より当院外科で潰瘍性大腸炎と診断され,メサラジン内服で寛解維持していたが,入院 4 日前からの発熱を主訴に来院した。皮膚に圧痛を伴う紅斑が出現し,病理組織検査でフィブリノイド変性を伴う血管炎の所見を認めた。抗好中球細胞質抗体のうち,プロテイナーゼ 3 抗好中球細胞質抗体陽性が判明し,抗好中球細胞質抗体関連血管炎と考えステロイドパルス,静注シクロホスファミドパルスを施行したが再燃を繰り返した。メサラジンによる薬剤誘発性血管炎を疑い中止したところ解熱し,4 週間で紅斑も完全に消褪した。抗好中球細胞質抗体関連血管炎としては典型的な経過をとらず,免疫抑制療法に反応不良な場合には,薬剤誘発性血管炎の可能性も念頭に置く必要があると考えられた。
  • 林 裕作
    2022 年 18 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 81 歳男性。突然の呼吸困難で救急外来受診。胸部レントゲンにて急性肺水腫を認めた。非侵襲的陽圧呼吸(NPPV),ニトログリセリンの持続点滴など施行し,一旦心不全は軽快傾向となった。しかし第 10 病日より再び心不全が増悪し,高次病院へ転院となった。高次病院での心臓超音波検査および心臓カテーテル検査にて,バルサルバ洞動脈瘤破裂と診断され,瘤切除,パッチ閉鎖術が施行され,軽快退院となった。心不全の原因を診断することが重要であり,文献的考察を加えて報告する。
  • 上西 陽介, 上野 真行, 辻 喜久, 上山 伸也, 小山 貴, 池田 有希, 戸川 文子, 羽田 綾子, 眞野 俊史, 石田 悦嗣, 山本 ...
    2022 年 18 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 67 歳,男性。アルコール性慢性膵炎とwalled-off necrosis(WON)の既往があり,発熱と腹痛,尿量減少を主訴に近医を受診した。血液検査とCTで慢性膵炎の急性増悪と診断され入院した。当初は軽症であったが徐々に全身状態が悪化し,重症急性膵炎の基準を満たした為当院に搬入された。敗血症性ショック,播種性血管内凝固を伴い,特徴的なCT所見と持続性の菌血症をきたしていた事から,感染性WONが上腸間膜静脈に穿破したと考えた。循環動態が不安定で高度の凝固障害を伴い,ドレナージやネクロセクトミーは実施困難であった。感染性心内膜炎の治療指針に準じ,6 週間の抗菌薬 2 剤併用療法と抗凝固療法を行い良好な転機が得られた。感染性WONの血管内穿破に対して侵襲的な治療が困難な際,これらの治療が有効な可能性が示された。総合診療医にとって,重症度評価の反復と円滑な病院連携の重要性を実感する一例であった。
  • 飯田 浩之, 木戸 礼乃, 石川 彩夏, 内倉 淑男, 神尾 学, 福味 禎子, 沼田 裕一, 松下 尚憲
    2022 年 18 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 42 歳男性。4 年前に気管支喘息を発症し,治療中に喘息症状の増悪や発熱,鼻閉,皮疹,浮腫,下痢と多彩な症状を認めた。末梢血にて好酸球が上昇し,気管支肺胞洗浄中の好酸球増多を認め,病理組織では副鼻腔,皮膚,消化管に好酸球浸潤を認めた。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)との鑑別に苦慮したが,血管炎所見が認められず特発性(idiopathic)好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)と診断した。全身ステロイド治療にて一時改善したが,減量に伴い再燃したため,難治性喘息に対し抗 interleukin(IL)-5 抗体であるメポリズマブ 100 mg/4 週を投与したところ気管支喘息に加え HES の病態も改善し全身ステロイド投与が中止可能となった。 EGPA や HES ではメポリズマブ 300 mg/4週の有効性が確認されているが,100 mg/4 週(低用量)の投与でも EGPA に有効であるとの報告もある。低用量でも気道炎症に限らず好酸球増多に伴う臓器障害にも効果があるとが示唆され,HES の病態改善にも有効である可能性があると考えられた。
  • 高島 明美, 長谷川 修, 佐野 正彦, 若松 真央, 高橋 雄介, 岩田 史歩子, 鈴木 義夫
    2022 年 18 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    本邦において,成人でのサイトメガロウイルス(CMV)初感染による急性感染例が増加している。呈示症例は 31 歳,男性。3 週間持続する発熱,頭痛を認め,リンパ球の軽度増加,肝胆道系酵素上昇を合併していたが,咽頭炎や頸部リンパ節腫脹は目立たなかった。不明熱の精査目的で当院に入院し,CMV感染による伝染性単核球症と診断した。肝脾腫を認め,無症状の脾伷塞を合併した。経過観察で脾伷塞の増悪はなく,1 ヵ月後に改善を確認した。CMV単核球症は Epstein-Barr virus(EBV)による伝染性単核球症に比べて非典型的であることが多く,健常成人の不明熱では鑑別にCMV感染を挙げる必要がある。また,脾伷塞を合併することがあり,その検出にはD-dimer測定と,腹部CTあるいは腹部エコーによるスクリーニングが有用と考えられた。
  • 宮川 亮, 金澤 綾子, 矢野 あゆみ, 二瓶 俊一, 相原 啓二, 蒲池 正幸
    2022 年 18 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    既往のない 41 歳女性。来院 5 日前から持続する右後頸部痛とふらつきを自覚した。来院日,排便後の起立時に意識消失し,意識回復後もめまいによる体動困難があり当院に救急搬送された。傾眠傾向はあるがその他バイタルは安定しており,神経脱落所見を含めた身体所見に異常を認めなかった。頭部CTでは異常所見を 認めず追加で頭部MRIを行った。DWIで右小脳伷塞を認めた。加えてT1 強調画像で椎骨動脈の壁内血腫を認めたことや,BPAS(basi-parallel anatomical scanning)で右椎骨動脈が描出された一方,MRAで右椎骨動脈が描出されなかったことから右椎骨動脈解離に伴う小脳伷塞と診断した。めまいの多くは末梢性だが,本症例のように後頸部痛や傾眠傾向があるなど末梢性めまいとして一元的に説明できない所見があれば,椎骨動脈解離を含む中枢性めまいを考慮してBPASを含む頭部MRI撮像する必要がある。
  • 妹尾 和憲, 池田 晃太郎, 佐藤 只空, 古本 健太郎, 永田 健, 河島 昌典, 岡本 良一
    2022 年 18 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は特に既往がない 38 歳の女性。当院を受診する 1 ヶ月ほど前から上口唇腫脹が出現した。その後,前頸部リンパ節腫脹も伴うようになり,口唇の症状も改善を認めなかったため精査目的に当院を受診した。生活歴より口唇梅毒の可能性を考え血液検査を施行したところ,RPR定量値 62.50 R.U と高値で活動性梅毒が疑われた。抗菌薬による治療を行ったところ,速やかに症状は改善した。近年は性交様式の多様化や性風俗産業の増加に伴い,口腔咽頭症状を初発症状として受診する梅毒患者が増加傾向にあるため,臨床現場では常に梅毒の可能性を忘れずに診療する必要がある。
  • 中村 重徳, 石森 正敏
    2022 年 18 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    EBウイルス(Epstein-Barr virus,以下 EBV)による伝染性単核球症(infectious mononucleosis,以下IM)を伴ったバセドウ病の 2 例を経験した。症例 1 ,2 共に 24 歳女性。症例2 は授乳中。両例,甲状腺ホルモン過剰に伴う症状と発熱を訴え,受診。両例,甲状腺肥大と両側顎下部と両側頚静脈外側に累々としたリンパ節の腫大を認めた。初診時,両例共に口腔内には特別な異常は無く,平熱であった。症例 1ではTc甲状腺摂取率は高値,シンチではびまん性の甲状腺腫。両例,甲状腺ホルモン高値,TSH低値,TRAbとTSAb陽性などよりバセドウ病と診断。また両例,EBV抗EAIgGとEBV抗VCAIgM抗体が陽性,かつEBV抗EBNA IgG抗体が陰性であり,EBVの初回感染による IMと診断した。バセドウ病はチアマゾールで加療し,経過中,リンパ節腫大は軽快した。扁桃炎/咽頭炎は初診時認めなかったが,経過中軽度の症状を示した。EBV感染と自己免疫疾患発症との関連がこれまで報告されており,今回の症例ではバセドウ病発症にEBV感染が関与している可能性が考えられた。
  • 中西 嘉憲, 山口 治隆, 大倉 佳宏, 川人 圭祐, 吉岡 一夫, 池山 鎭夫, 上山 裕二, 谷 憲治
    2022 年 18 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    症例は 73 歳の女性で,3 日前からの右季肋部痛を主訴に紹介受診した。血液検査で炎症反応高値,造影CTでは十二指腸憩室壁の浮腫状変化を認め,十二指腸憩室炎と診断した。内視鏡所見では十二指腸壁の浮腫状肥厚と,十二指腸憩室からの膿汁の排出を認めた。憩室内を洗浄することで腸石の排出を認め,その後は抗菌薬投与で保存的に改善した。十二指腸憩室炎はまれな疾患であり,穿孔を起こさず保存的に治療しえた報告は少ない。処置には愛護的な操作が必要とされるが,憩室の洗浄による腸石の排出は十二指腸憩室炎の治療法の一つとして考慮される。
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