2024 年 20 巻 1 号 p. 28-33
症例は89歳男性。20年来の高血圧症にて外来加療中。2週間程続く歩行時のみのふらつきを主訴に来院した。神経学的異常所見は乏しかったものの, 頭部MRI検査で右小脳梗塞と診断され, 背景疾患の精査およびリハビリテーション目的に同日入院となった。入院5日目に左下肢優位に筋力低下が出現し, 追加精査にて左腸腰筋に腫瘤を指摘された。他院でCTガイド下針生検が施行され, 病理検査にて脱分化型脂肪肉腫の診断に至った。陽子線療法目的に他院へ転医し, 腫瘍径の増悪を認めず, その後約2年にわたり歩行可能な状態を維持した。後腹膜原発の脱分化型脂肪肉腫という比較的稀な疾患の報告および当初小脳脳梗塞とアンカリングし, 診断遅延をきたした症例の振り返りを含めて報告をする。