日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
20 巻, 1 号
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原著
  • 江畠 麗, 米澤 夏里, 磯﨑 遥, 阿部 祥英, 田中 克巳
    2024 年 20 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】小児の外来処方箋における保険薬局からの疑義照会内容を調査し, 発生しやすい処方間違いの傾向と改善策を検討する。【方法】2017年4 月1日から2019年3月31日の期間で昭和大学江東豊洲病院の外来診療を受診した15歳未満の患児の処方箋で, 保険薬局から疑義照会があったものを対象とし, 疑義照会を10項目に分類し, 集計した。【結果】最多は年齢や体重に見合わない薬剤量の処方を確認する「用量確認」であった。次いで処方薬の追加・変更を確認する「薬品変更」, 処方量の単位や小数点間違いを確認する「入力ミスの確認」で,これら3項目で集計の 過半数を占めた。【考察】小児に対する処方では, 年齢や体重によって規格が変わる薬剤, 散剤処方時の単位に特に配慮が必要であることが判明した。【結語】今回の調査によって小児の処方における問題点が明らかになった。疑義照会の内容分析は薬剤に関わる医療安全の向上に役立つ。
  • 越智 可奈子, 徳増 一樹, 中野 靖浩, 須山 敦仁, 副島 佳晃, 大塚 勇輝, 安田 美帆, 小比賀 美香子, 大塚 文男
    2024 年 20 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)は下垂体前葉機能低下症の中で成長ホルモン(GH)不足により様々な代謝異常をきたす疾患である。治療にはGH製剤の自己注射を要することから, 患者の予後改善にはAGHDの早期診断・治療とともに多職種連携や患者教育が重要である。 本研究では, AGHD診療における多職種での医療連携や専門医の育成を目的とし, AGHDに関する講義や専攻医に対する AGHD 患者のマネジメント指導において,その教育効果を検討した。まず多職種へのAGHD教育実践と効果の検討として,医師・看護師・検査技師・医薬情報担当者・医学生・看護学生・医療技術専門学生(作業療法学科・理学療法学科)に対してAGHDに関する講義を行い, 講義前後でAGHDの理解度を評価する目的でアンケートを実施した。アンケート内容を①基礎的事項, ②合併症に関する事項, ③診断に関する事項, ④治療・ マネジメントに関する事項の4分野に分類して検討したところ,全職種において講義後の正答率が上昇し, 各職種の正答率上昇率は分野ごとに違いを認めた。次に, 内科専攻医に対してのAGHD診療の実践教育を内科専攻医 4名に対して行い, AGHDの新規患者における診断・治療・GH自己注射指導およびマネジメント教育を実施し評価を行った。GH自己注射指導に関しては, 自己注射練習用器材を用いて実践的トレーニングを行ったところ, 全専攻医において診療能の向上を認めた。AGHD患者の診断やGH自己注射を含めた治療継続においては多職種連携や専門医育成などの医療者教育が非常に重要である。診療においては総合診療科における全人的・総合的診療の一環としての教育実践により, 医療者のAGHD診療に対する理解が向上しており教育効果が示された。
研究短報
  • 大塚 勇輝, 古川 雅規, 東影 明人, 大塚 文男
    2024 年 20 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い医療へのアクセスが制限されたが, 本邦において臨床検査に与えた影響については明らかとなっていない。2017年から2022年までの6年間に岡山大学病院において測定された内分泌検査測定件数を経年的に比較すると, 入院・外来ともにCOVID-19禍の3年間ではそれ以前に比してACTH・Cortisol, GH・IGF-I の測定件数は増加していた一方で, TSHや遊離T4, Renin活性(PRA)や Aldosterone(Aldo)の件数は減少しており, 特に外来における変化は TSH(平均値:19173件 vs 17512件),PRA(322件 vs 251件),Aldo(472件 vs 306件) と有意であった。内分泌疾患を有す,或いは疑われる患者に対する対面診療での測定依頼が減ったことや, 倦怠感など機能低下で生じうる症状を呈する患者が増えたことがその要因ではないかと考察された。COVID-19の流行が少なくとも部分的に本邦での医療の質に影響を与えた可能性が示唆され, その要因分析が今後の課題と思われた。
症例報告
  • 小関 昭仁, 鈴木 洋司, 望月 康弘, 杉山 和隆, 酒井 直樹
    2024 年 20 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    アパルタミドは前立腺癌に対し使用されているアンドロゲン受容体拮抗薬である。著者らは, アパルタミド投与後に, 間質性肺疾患および好中球減少症を併発した症例を経験した。症例は, 82歳の日本人男性で, 去勢抵抗性前立腺がんに対しアパルタミドによる治療が行われていた。アパルタミド投与後より, 皮疹, 倦怠感, 食思不振, 呼吸困難が生じ, 呼吸不全のため入院した。間質性肺疾患と好中球減少症が認められ, いずれも薬剤による影響と考え, 被疑薬の中止とステロイド治療, および, 抗菌薬とフィルグラスチムの投与により改善した。アパルタミド投与による薬剤性間質性肺疾患は本邦から3 例の報告があり, 好中球減少症の報告は現在までにない。いずれも頻度は低いものの, アパルタミドの重篤な有害反応として現れる可能性を認識する必要性があると考え, 報告する。
  • 宮川 峻, 北川 泉
    2024 年 20 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は89歳男性。20年来の高血圧症にて外来加療中。2週間程続く歩行時のみのふらつきを主訴に来院した。神経学的異常所見は乏しかったものの, 頭部MRI検査で右小脳梗塞と診断され, 背景疾患の精査およびリハビリテーション目的に同日入院となった。入院5日目に左下肢優位に筋力低下が出現し, 追加精査にて左腸腰筋に腫瘤を指摘された。他院でCTガイド下針生検が施行され, 病理検査にて脱分化型脂肪肉腫の診断に至った。陽子線療法目的に他院へ転医し, 腫瘍径の増悪を認めず, その後約2年にわたり歩行可能な状態を維持した。後腹膜原発の脱分化型脂肪肉腫という比較的稀な疾患の報告および当初小脳脳梗塞とアンカリングし, 診断遅延をきたした症例の振り返りを含めて報告をする。
  • 佐々木 澄子, 宇根 一暢, 坂下 知久, 平野 巨通
    2024 年 20 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    【症例1】86歳女性。受診3日前から倦怠感を訴えていた。近医を受診し発熱,血圧低下を認めたため当院へ紹介となった。CT検査で子宮内に径約9cmの鏡面形成を伴った腫瘤を認め, 経腟エコーで確認後にドレナージを施行し約300mlの膿汁を認めた。【症例2】74歳女性。当院受診の1週間前から食事摂取量が低下し, 体動困難となり当院へ救急搬送された。血液検査で炎症反応の上昇を認め, CT検査で子宮内に少量の液体貯留を認めた。経腟エコー後にドレナージを施行したところ約10mlの膿汁を認め子宮留膿腫の診断に至った。 高齢女性において, 子宮留膿腫は発熱, 食欲不振など軽微な症状から敗血症性ショックに至るまで様々な症状を呈する。我々は救急外来で同一日に子宮留膿腫を2例経験したが, 高齢化のすすむ本邦においては今後さらに遭遇する機会が増えることが予想される疾患であり, 産婦人科医だけでなく一般内科医も知っておくべきと考える。
  • 飯田 浩之, 松下 尚憲, 飯田 真岐, 柴田 朋彦
    2024 年 20 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性。発熱,咳嗽,血痰を主訴に近医を受診したが, 改善を得ず紹介受診となり入院となった。胸部造影CT検査にて肺動脈内に造影欠損を認め, 左肺動脈完全閉塞と右肺動脈高度狭窄を来していた。第4病日に呼吸不全, ショックとなり両側肺動脈閉塞と判断し緊急手術を行った。手術では腫瘍による両側肺動脈閉塞を認め部分的に腫瘍を摘出し閉塞は解除され, 病理所見は平滑筋肉腫であった。その後, 第18病日に軽快退院した。しかし, 腹痛を自覚し第39病日に再入院となった。胸腹部造影CT検査にて肺動脈内腫瘤影の再増大や腹腔内巨大腫瘤を認め化学療法を検討したが,第41病日に心肺停止となり永眠された。 病理解剖にて死因は腫瘍による両側肺動脈閉塞と考えられた。肺動脈原発肉腫は稀な疾患であり肺血栓塞栓症の初期診断となることも多く,鑑別が重要である。予後不良だが外科的切除で長期予後も望めるため, 早期の診断, 治療が重要である。
  • 稲永 優医, 髙木 慎太郎, 小坂 祐未, 大屋 一輝, 森 奈美, 岡信 秀治, 辻 恵ニ, 岡田 武規, 横山 敬生, 岡野 博史, 牟 ...
    2024 年 20 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    70代男性。入院4日前, 発熱を認め躯幹四肢の発赤, 全身倦怠感も出現し当院紹介受診。躯幹四肢に淡紅斑を認めCRP29.86mg/dL, Cr2.47mg/dL, eGFR21mL/min/1.73 m2, 血小板数5.4万/μL, FDP 24.5μg/mLで急性腎障害とDICのため入院した。また, 皮疹の性状よりリケッチア感染症が疑われたため直ちにミノサイクリン投与を開始した。皮膚生検PCR結果より日本紅斑熱と判明したが, 紅斑, 発熱は持続, 腎機能も悪化したため血液透析を施行しレボフロキサシン投与も追加した。入院4日目突然モニター心電図でST上昇を認めたため緊急冠動脈造影を施行したところ, 右冠動脈と左回旋枝に狭窄を認めSTEMIの診断でPCIを施行した。以後, 腎障害の改善とともに解熱, 紅斑も軽快し入院17日目に退院した。様々な合併症を併発し治療に難渋した重症の日本紅斑熱の1例を経験した。
  • 須藤 一郎, 佐々木 陽平, 小早川 真由美, 橋本 龍也, 鈴木 賢二
    2024 年 20 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー
    脊髄障害性疼痛症候群の患者にオキシコド ンを用いて疼痛が著明に改善した1例を報告する。 神経障害性疼痛の多くはイオンチャネルによる細胞の脱分極で引き起こされ, 難治性である。オピオイドは一般的に効神経障害性疼痛に対する効果に乏しく, 神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインでは第三選択薬となっている。しかし, 本症例ではオキシコドンの追加で症状が著明に改善した。 オキシコドンについては, 近年, 細胞内情報伝達系を介した鎮痛効果の他に, 細胞膜内のGタンパク質活性型内向き整流性K+チャネルによって中枢神経系のニューロン細胞を過分極にして神経障害性疼痛への効果をもたらすことが報告されており, 自験例もそれを裏付けるものである。 オピオイドは処方に際しての配慮が必要なことが多く煩雑な面もあるが, 有効性が比較的高いオキシコドンは神経障害性疼痛に対する治療薬として念頭に置くべき選択肢の一つであると考えた。
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