日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
症例報告
家族性非自己免疫性甲状腺機能亢進症が疑われた1例
中村 重徳 小牧 卓司
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 20 巻 2 号 p. 98-102

詳細
抄録

約3年間, 甲状腺ホルモン高値, TSH低値を継続した46歳男性を経験した。甲状腺は推定重量52gと肥大していたが, TRAb, TSAb, TgAb, およびTPOAbはいずれも陰性であった。I-123甲状腺摂取率は高値で, シンチグラフィーではびまん性の甲状腺肥大を示した。TSHR(TSH receptor)遺伝子の検討では, Exon10のcodon523においてATC(Ile)からTTC(Phe)へのアミノ酸置換をヘテロに認めるバリアントが同定された。母, 姉も甲状腺機能亢進症を示し, TRAb, TSAb, TPOAbは陰性であった。ご家族の同意が得られず, 母と姉のTSHR遺伝子の検索はなされていないが, 今回の例では家族性の非自己免疫性甲状腺機能亢進症の存在が疑われた。現在, 本例の甲状腺機能はチアマゾールで良好にコントロールされているが, 非自己免疫性甲状腺機能亢進症では抗甲状腺剤により寛解導入はできず, 今後も慎重に経過を観察したい。

著者関連情報
© 2024 日本病院総合診療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top